あの日、一瞬にして壊滅した都市で今、サッカーを存分にできることを、それぞれがどんな思いで受け止めたのか…(トップ画像は広島原爆資料館東館で撮影)
サンフレッチェ広島が12月10日、若手選手教育の一環で平和学習を初めて実施した。
サンフレッチェ広島では、被爆地で活動するクラブとして、サッカーを通じて核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を全世界へ発信するため、8月11日、V・ファーレン長崎との試合を「ピースマッチ」として位置づけエディオンスタジアム広島で開催した。
両クラブの選手、関係者、スタンドを埋めたサポーター、集まった子どもたち、「ピースマッチ」に共感した多くの人々と一体となった取り組みは県内外に大きなインパクトを与えた。
サンフレッチェ広島では、こうした活動を今後も継続し、広島からサッカー、スポーツを通じて平和発信していくために今回、チーム練習がオフになったこの時期に若手選手を対象とした平和学習の場を設けた。
参加したのは森島司(三重)、松本泰志(埼玉)、大迫敬介(鹿児島)、川井歩(山口)、川村拓夢(広島)の5選手でいずれもクラブ加入から3年以内。( )内は出身県。
澳和明ホームタウン推進担当部長とともに広島市中区の平和記念資料館を訪れた一行は、本館が改修工事を行っているため、東館展示を同館の浜岡克宣副館長の案内によりていねいに見て回った。その後は被爆体験証言者のひとり、飯田國彦さん(3歳で爆心地から900m離れた母の実家で、母に呼ばれて家の中に入ったときに被爆)の証言に耳を傾けた。
若手5選手はこの日、午前中にクラブの歴史についての研修を受け、平和学習に向けて準備。研修は2日間行われ、クラブに関係する企業訪問の体験や、ショップ業務体験など総合的なカリキュラムが 組まれている。
なお、サンフレッチェ広島F.Cユース出身の大迫敬介、川井歩、川村拓夢の3選手は毎年夏休みの時期に開催されるBalcom BMW CUP 平和祈念広島国際ユースサッカーの平和学習で同館を訪れている。高校時代を広島県外で過ごした森島司、松本泰志の両選手は初めて。
浜岡克宣副館長(右)の説明を聴く大迫敬介選手(中央)と松本泰志選手(左)
見学などを終えた大迫敬介選手の話
一日を割いてクラブの歴史や平和学習をすることができました。こういう機会はなかなかないので…フロントの方々のことや広島の歴史はあまり勉強することがなくて、きょう初めて知ったことが多くてすごく刺激を受けました。
僕は鹿児島出身(出水市)ですが長崎の資料館にも行ったことがあります。それでとても興味を持っていて、実際にどれほどのことが起こっていたのか、気になることなどはこちらから質問させていただきました。
実際に被爆を体験された方のお話を聴けたのは貴重ですし、そういう本当に辛い思いを自分たち若い世代が聴くことで、忘れずにずっと受け継いでいけたらと思いました。
こういう大変な思いをされた方が大勢、いらっしゃる。そういう歴史の中で今こうして何の不自由もなくサッカーができるのは当たり前じゃないと思いますし、それはもちろん広島だけじゃなく長崎の方々もそうですし、だから今の環境に感謝しないといけないと改めて感じました。
試合を観に来て下さる方々の中にもこういう思いをされた方がいると思うので、そういう人たちにも少しでも元気を与えられるように…僕はまだリーグ戦に出場できていないのですが、早く自分も出て、そういうピッチで自分の姿を見てもらいたいと思います。
地球平和監視時計 最上段には現在の時刻を示す丸い時計があり、中段には「広島への原爆投下からの日数」と「最後の核実験からの日数」のデジタル表示板、最下段には歯車装置が取り付けてある
浜岡克宣副館長より地球平和監視時計の説明を受ける
時計の数字を確認する森島司選手(左)と川井歩選手
展示フロアへ
爆心地を中心に直径5キロメートルの範囲を表した広島市の地形模型の見学
多くの人々が住む都市の上に原爆が投下され、一瞬で街は焦土と化す…
長崎に投下されたファットマン(画像手前)と広島に投下されたリトル・ボーイの模型を前に説明を受ける
広島・長崎に投下された原子爆弾についてはいっしょに展示されている
広島の被害状況
長崎の被害状況、なおV・ファーレン長崎が建設を進める新スタジアムもこの被害エリアの渦中にある
爆心地から1500メートルの東白島町で被爆した三輪車、このあと、3歳で被爆し孤児となった飯田國彦さんから、こんも三輪車の座席のところだけ熱線による変色が軽いことを聞かされる
被爆証言聴講、画像奥が飯田國彦さん
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