トップ画像は広島市内に貼られた河井克行氏のポスター、心の鏡に写るのは…
国際平和都市、広島。
人類初の原子爆弾による惨禍を乗り越え、「75年間草木も生えぬ」と言われた場所が本当に75年目を迎える今年、世界中からのインバウンドを受け入れ、平和の尊さを発信する観光スポットとなっている…はずだったが、新型コロナウイルスによって大変厳しい日々を送っている。
東京五輪の予定通りの開催に固執した安倍政権が中国との早期の交流遮断を怠り、あのダイヤモンドプリンセス号の乗船者の日本上陸を逆に遮断し、コロナウイルス検査の数を抑え、東京五輪延期が決まると感染拡大防止に本腰を入れようとしたがすでに手遅れだった。
広島県内でも新型コロナウイルス感染者の数は増加の一途を辿る。亡くなった方もいる。湯崎知事は「ひとりひとりの行動が新型コロナウイルス蔓延防止に繋がる」と県民に強く呼びかけている。
そんな広島で、もうひとつのニュースが並行して報じられている。河井夫妻の公選法事件、だ。
安倍政権と河井夫妻公選法事件には深い繋がりがある。新型コロナウイルスニュースと同時並行で安倍政権vs野党の「黒川弘務検事長定年延長問題」も報じられ、河井夫妻公選法事件を合わせた3つの縦軸が時折、横の繋がりをチラつかせながら、きょう4月20日の「河井氏の公設秘書、立道浩被告の広島地裁での初公判」に至っている。
繰り返しになるが、広島はスポーツや食・芸術文化など多彩な魅力を発信しながら世界と交流する平和都市だ。今、広島で起こっている話の中には、それとは真逆のものが複数ある。広島県警中央署の8,572万円盗難事件などその最たる例だ。
死人に口なし、30歳代で亡くなった元署員にすべてを押し付けて最終的には広島地検が不起訴にした。3月12日、これも新型コロナウイルス感染拡大の中、幕引きとなった。
署内に共犯がいたかもしれないし、上司の命令だったかもしれない。あるいは真犯人はのうのうと札束を前にしているかもしれない。県警が犯人を特定したのも、その死からずっとあとになってだし、だいたい亡くなった際には、その事実を公にしとうともしなかった。連日、地元のメディアがその自宅に張り付いていたのに、だ。
河井夫妻公選法事件でも県警は河井克行氏の高速道60キロスピードオーバーを見逃していた、と報じられたがその対応もいまだに明らかにされていない。あげくに先日、県警内での不祥事も複数、発表された。けっきょく署内で消えたお金は1円も見つかっていない。広島県民はカンカンだし、県外の人たちはあきれ顔だ。
地元メディアの力量不足がそうさせるか?河井夫妻公選法事件も、文春砲によって、捜査の舞台に引きずり出された。それがなければ、夫妻も、のうのうと安佐南区あたりを闊歩していたことになる。子供たちに、平和や生きることの大切さや正義を学んでもらうはずの広島に、まったくふさわしくない話ではある。
河井夫妻公選法事件で現場に張り付くカメラクルー
だが、一連の報道を見ていくと、河井夫妻公選法事件もまた最初の”予定”では秘書らがウグイス嬢に法定上限額を超える日当を支払い、しかるべき罪で罰金刑になり、はい一丁上がり!というようなシナリオだったと記憶している。
繰り返しになるが、警察署内で8,000万円も無くなる広島だから何でもあり、だ。
文春砲を稼働させたのは、もちろん河井夫妻の対極にいる人たちだろう。
文春の取材力によって、河井陣営には1億5000万円、重鎮の溝手顕正氏陣営にはその10分の1…露骨な選別の事実が明かされた(1月22日)。安倍首相に対して溝手氏がかつて「過去の人」などと発言したせいだと、様々なメディアで報じられている。
1月27日付、日刊ゲンダイの一面に「そこまでやるか」「批判議員潰しのために札束をバラまき…」とある
気に入らないから、不都合な真実だから闇に葬る…、これまた広島の街にふさわしくないやり口だ。これじゃ、新型コロナウイルスを自爆的に拡散させ、真実をSNSにアップした専門家たちの口を封じ、「アメリカが中国にばらまいた」と宣言した習近平体制といっしょにされてしまいそうだ。
河井夫妻の評判は以前から芳しいものではなく、週刊文春ではこの事件よりずっと以前に克行氏の言動に関する問題点を記事にしてもいる。だが、”菅側近”としてパワーをため込んできたはずの克行氏は、ますます周囲のスタッフやメディアに対して放漫な態度を続けてきたと言われている。
そして夫婦揃っての活躍の場を安倍政権に求め、安倍事務所など東京からの応援を強烈な追い風に、2019年7月の参院選に勝利した。で、その約4か月後に「案里参院議員のウグイス嬢買収(公選法違反)疑惑をスクープ」というブーメランによって、法務大臣辞任に追い込まれた。
だが、河井夫妻はその時点ではまだ、ブーメランでその首までは吹っ飛ぶことはないと考えていたようだ。「広島地検も、最初は河井陣営と繋がっている者がいて、守ってやろうと動いていた」とする広島メディア関係者の声もある。広島得意の何でもあり、の真骨頂…
その最中、広島地検が県議会議員の渡辺典子氏の自宅へ家宅捜査に入った。このあと広島で1月20日に会見を開いたは渡辺氏は杏里氏について「公の場で平然と嘘をつく姿にショックを受けました」とメディアに向け強烈な一撃を発信した。
この一件。最初の文春砲さく裂から1カ月半が経過した2019年12月23日、クリスマス前に案里氏から渡辺氏のもとに電話がかかってきたのだという。
詳細は割愛するが、要するに杏里氏側が渡辺氏側に法定限度を超えての支払いの”罪”をなすりつけようとした、ということらしい。1月30日(木)発売の「週刊文春」では、「河井夫妻が描いている責任回避のストーリー」が記されている。
渡辺事務所もそののち(4月9日に)広島地検の家宅捜索を受けることになる。一方で渡辺典子氏の方から検察のしかるべきところにクリスマスイブイブからの件で「直訴した」と話す関係者もいる。
何が真実で本当のところは何がどうなっているのか?は外野からは当然わからない。が、ひろスタ特命取材班としてはここは渡辺典子氏に1票投じたい。
かつて、湯崎知事や松井市長が「広島みなと公園優位」を叫んで止めなかった広島のサッカースタジアム建設地問題で、広島県のその頑な姿勢に毅然とした態度で意を唱えた(広島みなと公園スタジアムは不可とした)渡辺典子氏の態度にはその当時、拍手を送らせてもいただいた。
もっともその積極的な姿勢が地元紙などで大きく取り扱われることはなかったが…
日本国内でも新聞が売れなくなって久しい。だが、生まれた時から携帯やスマホがある世代でなければ、新聞を読む習慣は残っている。
安倍首相が衆議院予算委員会で「読売新聞を読んで(2017年5月8日)」などと平気で言い放ったことからも分かるように、全国紙ならば世論をも左右できる。
対する朝日新聞が河井夫妻公選法事件(この言葉も朝日系メディアから拝借したもの)で舌鋒鋭く斬りこむのも当然だ。
朝日新聞では系列のAERA誌でも”追撃の手”を緩めない。特に黒川弘務検事長の定年延長問題と河井夫妻公選法事件の関係については特段の”熱”を持って報じている。
そこでは、広島地検が1月に河井夫妻の広島市の事務所などに家宅捜索に入ったこと、その後、動きが止まっていたこと、2月には黒川氏の定年延長が突如として閣議決定されたこと、黒川氏の力によって、河井夫妻が一度は”安全地帯”へ入りかけたこと、などが綴られている。
しかしAERAの記事によれば、「森友」など安倍総理の「お友達案件」を処理してきた黒川氏といえども、広島地検の守備範囲に口を出せる立場にはない、となっている。広島高検の小川新二検事長こそ定年延長すべきという声が多々あがっていた、との事例も紹介されている。
確かにそうかもしれない。河井陣営の実働部隊の長である高谷真介秘書ら3人は3月3日に逮捕された。クリスマスイブイブの次はひな祭りだ。付け加えるなら最初に克行氏の実家などが広島地検の家宅捜査を受けたのは1月15日だ。文春砲の一発目からかなりの時間があり、そして最初の逮捕までも1カ月半を要している。
が、広島地検はその後、立道浩秘書らの公選挙法違反の罪による起訴(3月24日)を境に、捜査の手をイッキに広めていき、広島県民が仰天するような事態になったのは周知の通り。
なお、河井陣営に振り込まれた1億5000万円は自民党本部から、となっている。しかし、広島でいろいろ聞いていると党本部の金庫以外の、とんでもないところからも選挙資金が送られてきていて、そこから、すでに報じられているように県議会議員や市議会議員、複数の市長・町長のもとへ届けられたた(その場でもらった人、突き返した人と様々…)のだという説もある。
最後になるが10万円と30万円の国民への供給問題で「面目まるつぶれ」と報じられたばかかりの自民党の岸田文雄政調会長の今後も含めて、広島は今後、国政の未来を大きく左右する震源地になりかねない。
今、なお広島市中区の旧広島市民球場跡地で続けられている「ひろしまはなのわ2020」イベントの中に、広島の戦後74年を振り返る「未来に向けた思い出年表」というストリートがある。そこには「焦土の咲いたカンナの花」の記事もある。カープ初優勝やサンフレッチェ広島初優勝のシーンもある。
カンナとアンリ
こういう落ちにはしたくはなかったが、もし、後者の出身地が広島で、広島スポーツの歴史や紙屋町、基町の”昭和”にも深い理解があったなら、ふたつの花には接点が生じ、コロナに苦しむ75年目の広島に、もっと明るいニュースを届けられたのではあるまいか?
ひろスタ特命取材班
「未来に向けた思い出年表」にある説明書き
焦土の中のカンナ、現在の市内のどこなのだろうか?