画像はマツダスタジアムの年間シートなど
6月14日付の中国新聞に「年間パス払い戻しへ」「サンフレ税優遇利用も呼びかけ」の見出しで、サンフレッチェ広島が新型コロナウイルス感染拡大の影響により公式戦開催が変則的になったことに伴って「全額払い戻すことが13日、分かった」と報じた。
サンフレッチェ広島ではすでに6月11日、仙田信吾社長名で「ひろしまの力をあわせて Save HIROSHIMA」キャッチコピーの決定とその活動実施を発表。クラブと広島のみんなで支え合い、この難局を乗り越えて行こう!と呼びかけた。
その”呼びかけ”の中では、クラブ側の厳しい実情についてもこう”報告”した。
「サンフレッチェ広島は、開幕日が決まっても、無観客からスタートし、その後も3密を避けるために小人数しか収容できません。ついては、年間指定席購入済のお客様には返金が必要になります。Tシャツ売り上げは、この補填に充てて参ります。Save HIROSHIMAには、広島県、広島県民の生き残り、元気回復を込めていますが、同時に、サンフレッチェ広島も、現金収入が相当期間にわたって途絶え危急存亡にあります。この言葉には、常に広島の人たちと共にある私たち自身の存続という希望も込めています」
クラブ経営のトップ自ら「危急存亡」と訴えたのである。
6月13日に開催されたサンフレッチェ広島とガイナーレ鳥取の練習試合。急遽、YouTubeで配信され、最大同時視聴者数は1万3000人だった。ゴールや選手の好プレーには視聴者からの投げ銭機能「スーパーチャット」を使った「ギフティング」も多々あった。だがそれも100円、1000円単位の積み重ね。公式戦開催時の入場料収入とは比ぶべくもない。
サンフレッチェ広島の昨季のホームゲーム平均入場者数(リーグ戦のみ)はJ1ワースト2位の1万3886人でJ2で最多のアルビレックス新潟にも及ばなかった。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が2019年9月に発表したJリーグマネジメントカップ(JMC)2018にいると、J1で最もマネジメント力の数値が高いのは川崎フロンターレ。鹿島アントラーズ、浦和レッズ、名古屋グランパス、ガンバ大阪と続き、サンフレッチェ広島は15位…
浦和レッズも13日、練習試合をYouTubeで配信。最大時で4万7000人が視聴し、10万円の高額投げ銭もあったという。
だがその浦和レッズでさえ「衝撃」の赤字シーズンが待ち受けている。
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浦和レッズは6月10日、販売済みのシーズンチケットの全額払い戻しに対応していく方針を発表した。
同日にはベガルタ仙台も同様の発表を行った。ガンバ大阪は6月2日に、FC東京は5月13日には「全額払い戻し」を決め「公式戦が再開されても通常のサービスの提供が困難」とその理由を説明している。
一方のプロ野球。
NPBでは対応は各球団に任せる、としたが、一番動きが早かったのがDeNAだ。5月26日、 シーズンシートを購入したファンに対して無観客試合となった試合分の料金をシーズン終了後に返金すると発表した。
新型コロナウイルスに12球団で最も敏感な楽天は6月1日、「年間シートについて」次のように発表した。
「開幕後の試合観戦につきましては、感染防止対策のため、座席の指定、間引き等の制限がかかる場合がございます。観客数を制限して試合を開催する場合は、別途ご案内を送付させていただきます。中止もしくは無観客試合が決定した試合分(交流戦含む)のチケット代金はご返金いたします」
6月3日にはオリックスが年間シートの「全額払い戻し」を発表。ヤクルトは6月10日に「A案・今シーズンのご契約金額を翌シーズンの契約に振り替え」もしくは「B案・ご契約金額の全額払い戻し」を提示している。
巨人は、チケットゲッター逮捕のニュースが耳目を集めた。
警視庁が、昨年10月の巨人戦入場券などを不正に高値転売していたとして、シーズンシート契約者の70代会社役員をチケット不正転売禁止法違反の疑いで逮捕した。
マツダスタジアムにおける一部、転売ヤーの常套手段でもある。年間指定席をネットやチケットショップで高額転売し、その売り上げで自分は別の席に座る。そういうことが長らくまかり通っている。
今回、プロ野球は無観客でスタートするがいずれは入場者限定でスタンドが開放される。またマツダスタジアムに巣くう転売ヤーたちが群がってくる。
先の警視庁による転売ヤー逮捕劇では巨人も、その摘発に協力したことが分かっている
その巨人。メディアの報道によれば、年間シート購入者に向けて、開催されなかった試合分の返金と今季の権利を継続する権利を選ぶか、ヤクルトのA案のように来季に振り替えるかの2択を提示した、となっている。
東京ドームのシーズンシートは約1万席とされ、もしその半数が「権利継続」を選べば、もうそれだけで部分開放された席は売り切れてしまうだろう。
ますます転売ヤーにはおいしい状況が生まれる。だからこそ警視庁は動いた。
ところでマツダスタジアムの年間シートについては6月1日、購入者に向けて次のような案内があった。要旨はこうだ。
・試合数が120試合に減り無観客開幕となったので、1試合でも多く観てもらえるよう努力します。
・前後左右を空けた席となるため新しい入場券ができ次第連絡します。
現状において、マツダスタジアムの年間シートに関しては「払い戻し」の考えはないようだ。その数およそ8300席。莫大な金額になる。
プロ野球はJリーグに比べれば遥かに恵まれた状況にある。そもそも経営規模が違う。新型コロナウイルス感染者が500人以上を超えた東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道、愛知、大阪、福岡、兵庫は確かに多くの課題を抱えているがそれでも人口が集中しており、Jリーグのように地方のスポンサーを”かき集めたり”、入場者数に自ずと限界があるわけではない。
その12球団経営と新型コロナウイルスとの戦いについて日本経済新聞が次の記事をアップしている。
広島が12球団最強?堅実経営で非常時の耐性トップ
www.nikkei.com/article/DGXMZO58296700R20C20A4000000/
そこには企業の支払い能力を意味する「流動比率」が紹介されている。
広島の「流動比率」211パーセントは群を抜く。親会社なしの広島は、すべて自己責任。支えているのはファン。経営の健全化は何より大切だ。
2位が阪神の187・6パーセント。
すぐに使えるお金を懐に抱えている「流動資産」は165億円の阪神がトップ。広島の73億円が2位。
広島はこれだけあればもしも1シーズン公式戦ゼロでも耐えられる。球団に詳しい関係者も「キャッシュフローは1年半分くらいあるのでは?」と話している。
日本経済新聞から「最強」とされた広島東洋カープと、J1の中で経営的に苦戦が続くサンフレッチェ広島。
だが年間シートの取り扱いについてはある意味、真逆になっている。
Jリーグのガイドラインに沿いつつ再開に向け備える各クラブと、NPBから開催方法を”丸投げ”された12球団が、無観客試合からどう展開し、そこで転売ヤーを始めとする課題にどう取り組むか?
新型コロナウイルス感染拡大阻止、という未知の戦いの今後が注目される。
ひろスタ特命取材班