画像は三原市から臨む瀬戸内の風景
サンフレッチェ広島が「クラブ史に残る惨敗」(6月17日付中国新聞)を喫した。
ただし、この一敗はただの“惨敗”ではない。サンフレッチェ広島の近い将来の”苦戦”までも暗示する。
「優勝」を掲げてスタートした城福浩監督4シーズン目のサンフレッチェ広島。その最後の可能性が残されていたはずの天皇杯 JFA 第101回全日本サッカー選手権大会。6月16日、エディオンスタジアム広島に京都府代表のおこしやす京都を迎えての2回戦は1-5の完敗で初戦敗退となった。
相手は関西1部リーグ所属。今季はJFL昇格を目指している。地域リーグ-JFL-J3-J2-J1、だからサンフレッチェ広島にとっては4つも下のカテゴリーの相手だ。しかもホームゲーム…
あまりの酷さに後半途中からサンフレサポーターからは相手の好プレーに向けて拍手が送られたほどだった。
前半28分に先制されさらに38分にもクリアミスから2点目を許し、前半終了間際、MF柴﨑晃誠のゴールで1点差。ハーフタイムでどう立て直すかがカギだったはずだが選手交代なしで後半に入り、後半15分の森島司、ハイネル、ジュニオール・サントス同時3枚替えに続いて浅野雄也、藤井智也もピッチに送り込んだが、逆にそのあとCKか3点目を失い浮足立つと後半途中から入ってきたFWふたりに相次いでゴールを許した。
キックオフからしばらくは地に足がついていなかったのは相手の方。パスミス、トラップミス…
しかしサンフレッチェ広島の試合運びからは「なんか意識が軽いように見えますね」(スタジアム記者席からの声)という不穏な空気が漂った。MF茶島雄介の転倒から失った2点目が危機感をさらに増幅させた。
それでも1点差に詰め寄り、逆にメンバー交代のタイミングが遅れた。そしてCKを押し込まれた時点でもはや勝負あり。前半2点目を決めた京都FW高橋康平のヘディングシュートは見事だった。
午後6時キックオフで観衆1,114人。この数は6月5日、エディオンスタジアム広島に隣接する広島広域公園第一球技場で開催されたWEリーグプレシーズンマッチ、サンフレッチェ広島レジーナ-INAC神戸レオネッサ戦の1,573人にまったく及ばない。
サンフレッチェ広島、サンフレッチェ広島レジーナにも完敗?
だが、真に注目すべきは、おこしやす京都の運営母体である株式会社スポーツX(京都府京都市・小山淳 代表取締役社長)の動向だ。
小山氏は2009年、株式会社藤枝MYFCを創業。2014年には5年でのJリーグ入りを果たした。おこしやす京都の運営にもそのノウハウが活かされている。
その第3弾のホームが「せとうち・備後」…
そんな声が備後エリアの関係者の間で上がるようになってもう1年以上が過ぎようとしている。昨秋にはスポーツX関係者が盛んに備後エリアの企業にあいさつ回りを続けていた。
地方産業集積度で特筆すべき土壌の広がる「せとうち・備後」圏に新サッカークラブ。
昨季、天皇杯で広島県代表として旋風を巻き起こした福山シティFC(広島県1部リーグ)は今大会でも9日の2回戦でJ1清水エスパルスに挑み、惜しくも0-1で敗れた。その名の通り「福山」からJリーグ入りを目指している。
そんな広島県東部から新たに「せとうち・備後」の名でJリーグを目指す動きが活発化すれば、Jオリジナル10のサンフレッチェ広島が長年に渡って築き上げてきたノウハウの軌道修正を迫られることにならないか…
「サンフレッチェ広島撃破」のジャイアントキリングで、Yahoo!リアルタイム検索では「おこしやす京都」「ジャイキリ」などがトレンド入り。スポーツXに追い風が吹く。
実際、広島県東部リーグ2部では、すでに「せとうち備後FC」が活動を始めている。
広島と備後、その2つの圏域を繋ぐ瀬戸内の町と島とそこに住む人々や経済活動。100年を超える歴史を紡いできた広島サッカーの10年後、30年後の勢力図に大きな変化?その最初の一歩が「クラブ史に残る惨敗」だったということになるのだろうか…(田辺一球&広島スポーツ100年取材班)
※この記事は福山大学、福山平成大学で開講の「広島スポーツ学」などを元に再編集してあります。