日本ホッケー協会は5月15日、大阪市内で理事会を開いた。この中で日本スポーツ仲裁機構(JSAA)が女子日本代表監督の解任は不当、とした柳承辰(ユ・スンジン)氏(コカ・コーラウエスト レッドスパークス前監督)について全員一致で改めて「解任」を決定した。
この決定を受けて柳承辰氏は再度、JSAAに解任取り消しを申し立てた。
JSAAは7日に理事会ではなく一部の幹部による話し合い(業務執行理事会)で柳氏の解任を決めた点を問題視。その背景には日本ホッケー協会のガバナンス(意思決定、合意形成システム)の問題があることも示唆してその改善と正当性の確保を求め「解任手続き不当」の裁定を下した。裁定には法的拘束力がある。
これに対して、この日会見した協会の宮野正喜常務理事(京都市生まれ、協会機関誌「ホッケーマガジン」編集長)は「監督選考のガイドラインの作成」など”手法”の変更のみを強調する対応策を発表するにとどまった。
この問題では協会内部での暗部の一端が白日のもとにさらされた。
昨秋の仁川アジア大会前、日本協会常務理事の山口修一郎強化本部長(立命館大学男子ホッケー部監督)が配信したメールの中身は次のとおり。
「あいつは我々をなめているんですかね。アジア大会終わったら、勝ったとしても、やめさせましょうか?くそなまいきな、ぼうず、のさばりくさっているなら、うっとしいだけですよ」
一斉メールを送信したため、柳氏のもとにもそのままの内容が届き、それを柳氏がオープンにした。この内容は新聞報道やネット記事により多くの人の目に触れることになった。なお、アジア大会終了を待って柳氏に送られてきたのは解任通告メールだったという。
柳氏はこのあとコカ・コーラウエスト レッドスパークスの指揮官としてチーム四冠に挑み、公式戦全日程終了後、コカ・コーラウエスト レッドスパークスの監督も辞任した。
日本ホッケー協会下部組織の関西協会では先ごろ元男性事務局長が協会関係者らに新幹線回数券の購入費を立て替えさせ、未返済のまま連絡がつかなくなっていることが明らかになっている。新聞記事には「横領」の文字も目立つ。
関西ホッケー協会は関西6府県の事業を担当してるが、この日の会見が大阪市内で開かれたことからも分かるようにホッケーの拠点性は関西にある。この事件が事実とするならば「ガバナンス体制」確保などほど遠い状況にあることは誰の目にも明らかで柳氏の主張の正当性が現実味を帯びてくる。
2012年には協会トップが「なでしこ(女子サッカー日本代表)より美人が多い」とさくらジャパン(ホッケー日本代表女子)を紹介してひんしゅくを買ったことも記憶に新しい。
また、昨年7月の日本ホッケー協会理事会では、参院議員の片山さつき氏の新会長推薦を決めながら、男子日本代表の単独チーム制をめぐる内紛で6月に解任された前会長ら旧執行部が決議の取り消しを求めて訴訟を起こすなど混乱が続いていることから会長就任を固辞され、横田努氏がそのまま会長を続けている。
なお、日本ホッケー協会HPの「新年あいさつ」には次のように綴ってある。
新年明けましておめでとうございます。
皆様方におかれましては、お健やかに新春をお迎えになられたことと謹んでお慶び申し上げます。
年頭にあたり、平素日本ホッケー協会を支えていただいている皆様方のご健勝、ご多幸を心からご祈念申し上げます。
さて、昨年は協会内の大きな変革により、皆様方に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたが、大会も全て順調に開催でき、新年早々から役員一同全力で頑張っております。ホッケー選手の為の協会であり、選手の皆様が夢を持てる環境づくりにこれからも努力をしてまいりたいと思います。
今年はリオデジャネイロオリンピック出場に向けて新生サムライジャパン、さくらジャパン男女共に全力で頑張ってまいりますので、皆様方の応援を宜しくお願い致します。
そして2020年の東京オリンピックに向かって、東京2020ターゲットエイジ構想も着実に進行させて行きます。
今後とも皆様方のご支援、ご協力をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
2015年 元旦
公益社団法人 日本ホッケー協会
会長 横田 努