2月27日午後6時の時点で整理券を求めて560名余りが並んだ。午後9時過ぎにはスロープの半分を超えるところまでファンで埋まった。このまま朝を迎え、28日午前10時前からやっと整理券配布が始まる。実際の入場券発売は3月1日午前10時ごろを予定。
すでに「ひろスポ!」で「熱帯」から「亜寒帯」への”気候変動”とともに伝えてきたマツダスタジアム、大型スロープ前の行列が2日前の同時刻とは比較にならないファンの数となって、大型スロープとコンコースの合流地点手前からスロープの幅員のまま行列を作り始めた。行列は昨夜8時ごろ今の場所に移動してすでにそこで一晩を過ごし、今晩が2夜目になる。
いったいどれだけ並ぶことを想定しているのか? 延々と続くパイロン(カラーコーン)とパイプ
広島球団ではスロープに急きょ導線を築いて対応。人々は防寒態勢を万全にして雑誌やスマホを手にひたすら時間が経つのを待つか、あるいは入場券の販売状況をチェック…。しかし、まだ一般発売されていないにもかかわらず、ほぼ売り切れの席種も多数出ている。
一般発売前に売り切れ続出を示す案内板、こうした状況がファン心理に拍車をかける。
ファンの間からは、当然ながらこの状況に不満を抱き、改善を訴える声も多数出ている。確かに元気に会話しているツワモノもいる。でもそれは全体の2割程度で大多数のファンはじっと毛布などにくるまっている。
トイレも近くにはない。当たり前だが暖房器具もない。
国内12球団、あるいはJリーグの全53クラブで、吹きさらしの寒空の下、整理券を受け取るために2晩も2晩も待たされるファンなどどこにもいない。「待つのは勝手」という範疇の話ではなくなってきている。
小さな子どもの手を引き行列に加わるファン
マツダスタジアムは災害時の避難場所だが、それにしてもこの状況は…
昨日、カープ球団が公正取引委員会から勧告を受けたことが明らかになったが、「勧告」は国内15件目で、1245件まではイエローカードにあたる「指導」で済んでいる。
公正取引委員会が出した”一発レッド”はそれほど悪質だった、ということの裏返しということなのだろう。
ところで、このマツダスタジアムと大型スロープは、その管理制限や使用許可権限を民間に委託できるようにした制度である「指定管理者制度」によってカープ球団が広島市から指定されて指定管理者になっている。
マツダスタジアム開設前、指定管理者をどこにするか、という話が出た際に関係者の間では「公募すべき」という声があがっていたが、当時の市担当責任者はそんな声に抗って「非公募」とし、市議会を経てカープ球団が指定管理者に決まったいきさつがある。
広島市の指定管理者の内訳を見ると公園、〇〇センターと呼ばれる施設には非公募が多い。しかし各区スポーツセンターほか、スポーツ関連施設はすべて公募。エディオンスタジアム広島のある広島広域公園も当然、公募でマツダスタジアムの「非公募」扱いが際立っている。
さらに通常の指定管理者との契約が5年間なのに対して、カープ球団は10年間もの長期に渡る指定管理者としての契約を結んでいる。この契約がカープ球団の売り上げ増に寄与していることは言うまでもない。
旧広島市民球場とは比べ物にならないほどカープ球団には球場使用の自由度が与えられ、その結果、旧広島市民球場時代は看板広告収入が中心だった営業活動も様々な方法が可能になっている。
マツダスタジアムは広島市民球場である。その市民球場の施設内で市民らに大きな負担を強い、あるいは市民が購入するカープグッズにまつわる勧告を公正取引委員会から受ける…。広島市のチェック機能が働かない中でトラブルが次々に起こる。
「指定管理者制度」は一般的には多様化する住民ニーズに、より効果的・効率的に対応するためにあるという。効果的・効率的なサービスができない場合は、指定管理者取り消し、というケースも考えられる。
新サッカースタジアム取材班