7月12日、広島広域公園第1球技場は熱気に包まれていました。
福山大学応援風景
2015年度全広島サッカー選手権大会、決勝戦。県内およそ100チームが予選を行い、トーナメント方式の決勝大会で最後に残った2チームは広島経済大学と福山大学でした。
広島経済大学は5月にあった中国大学リーグ1部で福山大学と対戦して2-2の後半アディショナルタイムに決勝ゴールで白星をあげ、いいイメージでこの日を迎えました。
試合前、リラックスしたムードの広島経済大学
福山大学も社会人チームを接戦の末、倒して順調に勝ち上がってきましたが、累積警告のため#10加次佑選手を欠く戦いとなりました。
福山大学は加次選手のユニホームと試合前撮影
前半、積極的に攻める福山大学
福山大学#9國師龍也選手のヘディングシュートはクロスバーの上…
試合は互いに譲らぬ展開となり、90分間では決着がつかず延長へ。 迎えた延長2分、広島経済大学の途中出場、曽田倖輝選手のシュートがゴールネットを揺らし、そのまま逃げ切った広島経済大学は4年ぶり4度目の天皇杯全日本サッカー選手権大会出場を決めました。
広島経済大学の気合いの入った応援風景
試合終了のホイッスルの瞬間、ピッチに倒れ込んだ福山大学イレブンはなかなか立ち上がることができませんでした。やがて相手チームの選手の手も借りて整列、表彰式が始まりました。
「加次がいない分、他の選手が必ずやってくれる」と話していた福山大学、吉田卓史監督の想いは残念ながら届きませんでした。
優勝まであと半歩…だった福山大学・吉田監督
そして試合後、フェイスブックにはこう綴られていました。
「これほど1点が遠く感じたゲームはありません。選手たちはよく戦ってくれましたが残念な結果となりました!ただ来週末にはリーグ戦が再開します。前をみて次の試合に挑みます。会場に足を運んでくださった多くの皆様、またテレビで応援してくださった皆様大変ありがとうございました!選手たちはまだまだ成長してくれると思います。今後ともご声援よろしくお願いします!」
一方の広島経済大学にとっては「悲願」の天皇杯切符、となりました。
2013年春からチームの指揮を執る高橋真一郎監督、「真さんと全国大会へ」を合言葉に積み重ねた努力が実を結びました。
戦況を見守る高橋監督(右端)
高橋監督はマツダサッカークラブ出身。Jリーグ発足当初のサンフレッチェ広島初代メンバーで、サンフレッチェ広島の森保一監督らとともに戦った経歴を持っています。
現役引退後はサンフレッチェ広島やガンバ大阪ユースで指導者としての経験を重ね、柏レイソルや東京ヴェルディの監督を経て、大学サッカー界へと活躍の場を移してきました。
「うまくないけど、まじめにひたむきに練習に取り組む」学生たちに囲まれて、Jリーグの舞台とは別の喜びをかみしめる高橋監督。 …実は高橋監督の出身は旧深安郡神辺町、今の福山市で地元の松永高校に通いながらサッカーと向き合っていました。
親子ほどの世代の違い、はありますが、福山大学イレブンは、福山在住の吉田監督とともに”福山OB”に挑み、そして「1点が遠い」貴重な戦いを経験した、ということになります。
いつの時代にもスポーツの持つ力が新たな歴史を紡いでいきます。
そして、スポーツでもっと幸せな広島へ。
ひたむきにボールを追いかけ、走り続けて、やがて世代を超えた競争や戦いのその先で、また新たな未来へ向かって前進する。
吉田監督の言う「前を見て次の試合に」挑む、広島アマチュアサッカーチームの選手たち…。
広島経済大学イレブンはその代表として、8月30日、天皇杯1回戦で徳島県代表とこの会場で対戦します。
…そして、
この物語にはまだ続きがあります。
初戦を突破すれば、サンフレッチェ広島と2回戦で激突…
高橋監督が森保監督の胸を借りて、”地元”福山市竹ヶ端運動公園陸上競技場を舞台に、思う存分、戦うことになるのです。