2015年11月22日、午後3時20分過ぎ、サンフレッチェ広島の第2ステージ優勝が決まり3万3210人のスタンドに至福の瞬間が訪れた。
だが、その12時間前、すでにエディオンスタジアム広島周辺は、ピッチ上の歓喜とは大きな温度差のある状況となっていた。
広島広域公園の駐車場が開くのを待って徹夜で順番待ちする車の列。スタジアム正面の駐車場は早朝からあっという間に満車状態になった。
クラブ側が用意した臨時駐車場に向けてもみるみる長い車列ができて、片側2車線の道の左端は動かなくなった。割り込みや信号待ちのためあちこちで危ない場面が生まれ、実際に警察の出動する車両同士の事故も発生、真ん中の車線で動かなくなる車両もあり、渋滞はあさ6時、7時台から8時、9時台とどんどんひどくなっていった。
午前8時過ぎ。スタジアム正面からだと1キロ以上離れた歩道の下り坂を車椅子をかなりのスピードで押す少年が駆けていった。座っている弟の方もサンフレユニを着て笑顔だった。
胸にこみ上げてくるものがあるシーンだった。スポーツ行政貧困都市…。市民とスポーツのかかわりがどれほど意義深いものなのか、行政側は本当に理解しているのか?
公共交通機関を利用しづらい事情のあるサポーターもいるだろう。自家用車となると、早朝からスタジアムに向かわねばならない。別に用意された駐車場は3万人も集まればすぐにいっぱい。その場でどうすればいいか?正確な情報を集めることは不可能で、けっきょくデメリットを感じながらも無難な方法しか残されていない。
だいたいスタジアム前は大混雑で渋滞にはまり込めば動きもとれない。早朝だとシャトルバスもない。仮に冷たい雨の日であっても兄は弟のためにこの長い下り坂とそのあと続く長い上り坂を押していく。
さらにスタジアムのバックスタンド側に到着してもそこから正面へと向かおうものなら階段や段差だらけでバリアフリーの概念は完全に欠落。無理もない、1994年開催の広島アジア大会に向け建設した施設にはまだユニバーサルデザインの発想がない。
もうこんなことが十年単位で繰り返されている。
広島市内から来たという六百田さん親子は長い下り坂を歩きながらこう訴えた。
「臨時駐車場も開発に伴ってどんどん少なくなっています。もうずっとこうして応援に来ていますがこのままでは限界がくる。きょうみたいに寒くもなく暑くもなく歩ける日はいいですけどね…。早くスタジアムにつくのでボールを蹴って待つんです。市内市民球場跡地にスタジアムがあるのが一番だと思います」
六百田さん親子
5-0快勝で最終戦を飾った森保監督は試合後の会見の途中で「きょう朝、食事をとっている時にスタッフに聞いたら、ネットで調べたところ朝6時、もっと早くから来られていて渋滞中だ、と教えてもらいました」とコメントした。
森保監督はこの日、スタジアムにバスで到着するころ涙を浮かべていた、という
大一番を控えた指揮官が戦術面そっちのけ?でスタジアムのハード面、ソフト面にまで気を配るなどという話は聞いたことがない。
テレビも新聞もおそらく優勝報道に手いっぱいで当日のスタジアム問題には気を回す余力はないだろう。
よってひろスポ!で検証した結果、その結論として冒頭の一枚を関係者に訴えるために許諾をいただいた上で掲載した。
何度でもその風景に出合いたくなる、素晴らしい紫の疾風をもっと身近に、気軽にみんなが感じられるようになるために…
新サッカースタジアム取材班
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みなさんのスマホなどに記録されている、エディオンスタジアム広島周辺の混雑画像をひろスポ!までお送りください。チャンピオンシップ、湘南ベルマーレとの最終節ほか、エディオンスタジアム広島のアクセス面の悪さがわかる画像であれば何でも構いません。撮影日時がわかれば明記してお送りください。新聞、テレビがなかなか取り上げませんが、エディオンスタジアム広島周辺の試合前後の環境は極めて悪く、応援に来られるサポーターの多くが問題意識を持っておられるため、ひろスポ!では今後も現状を紹介していきます。その際、画像を使用させていただきます。
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