ゼロックス杯まず一冠!森保監督のピッチ内外での「挑戦」始まる、目指すは「広島」と「アジア」「世界」の「格」融合
サンフレッチェ広島が今季Jリーグの幕開けを告げる富士ゼロックス・スーパーカップで宿敵、ガンバ大阪に快勝し2年ぶり4度目の優勝を手にした。
前半でジャブを打ち合い、後半早々に佐藤寿人が泥臭く先制ゴールを押し込み、寿人と交替で出場した新背番号10、浅野拓磨がPKを決め、1点差に詰め寄られた直後に投入したピーター・ウタカがボレーシュートを叩き込んだ。
結果的には筋書きどおり。敵将、長谷川健太監督は何を感じとっただろうか?
昨季、Jリーグ、クラブワールドカップ、天皇杯などで”多額の賞金”を手にしたクラブは早くも優勝賞金3000万円を手にしたかっこうだ。
この「賞金」。Jリーグのクラブ経営においては大きな意味を持つ。プロ野球とは違い、Jクラブの全収入に対する「賞金」の割合はずいぶん高いものになっている。
だが「賞金」は臨時収入で当然、年間予算の中には組み込まれていない。各クラブは臨時収入をあてにせず、通常の営業活動でいかに安定した収入を得ることができるか、が大事になる。
昨季のJ1王者、サンフレッチェ広島は今季のクラブとしての目標として「年間30万人の集客と30億円の営業収入」を確保することを当面の目標としている。「30万人」は、リーグ戦17試合とナビスコカップ3試合の計20試合を対象としており、1試合1万5000人平均となる。
「30億円」も地方のクラブとしては簡単には達成できない数字だ。
サンフレッチェ広島の営業収入は例えば昨シーズン大詰め、J1第2ステージ優勝を決めた湘南ベルマーレ戦での大入りやチャンピオンシップ第2戦の入場者収入がなければ、8位に終わった2014年と営業収入はあまり変わっていない。チームの順位が落ちれば一気に「予算割れ」という事態もありえるのだ。
森保一監督はピッチ上で死闘を繰り返しながら、並行してクラブ経営をいかに安定させていくか、という視点でも常に”戦って”きた。そのスタンスは監督就任当初から変わらない。
お立ち台で「年間パス購入」を呼びかけたり、昨年12月のクラブワールドカップ勝利監督インタビューで「広島を世界に…」と繰り返したのもサンフレッチェ広島の戦いと広島の街全体と世界やアジアの人々を、そしてその「市場」をひとつのものとしてとらえているから、にほかならない。
世界中から広島にサッカーを愛する人たちがやってくる。きっと森保監督はそんな日が近い将来、訪れることを夢見ているのだろう。
だから今、大きな話題となっている広島新サッカースタジアムの建設場所においても旧広島市民球場跡地が最適ではないか、という考え方を説明して回っているという仮説が成り立つ。そうでなければJ1最強のチームを指揮する監督は、ピッチ上での仕事に専念するはずだ。
と同時に、「なぜサンフレッチェ広島がこうも強いのか?」という疑問にもこうした一連の動きや広島の置かれた状況が、無言の回答を示しているとも考えられる。
森保監督とサンフレッチェ広島の全選手、全スタッフは広島の、そしてチームを応援してくれる全サポーターの「笑顔」のために戦っている。
2年ぶりに参戦するACLやJ1での再び始まる死闘の先に目指すべきもの、それは決してブレることがない。
都市にはそれぞれの「性格」がある。「都市格」という言葉もある。
広島は、アジアと世界と繋がる「格」を有している。昨年のクラブワールドカップがそのことを改めて証明した。リバー・プレートのサポーターがわざわざ大阪から広島まで足を伸ばし原爆ドームなどを見て回ったことからもわかる。
そう、「格」の違いがサンフレッチェ広島を強くしている。森保監督らのピッチ内外での懸命な積み重ねによって、である。
もちろん「挑戦」する相手たちは簡単に勝たせてはくれないし、相手がJ1王者と見るや必死に潰しにかかってくる。だから少しでもそこに止まろうとすれば、脱落の危機が待っている。
昨年12月だけで、チャンピオンシップ、クラブワールドカップ、天皇杯、計8試合。
今年もいきなりこの先1カ月で、Jリーグ開幕戦を含む3試合、ACLも同じく3試合プラス、アジアでのハードな移動が待っている。
ここからがどんな1カ月になるかは誰にもわからない。
だが、サンフレッチェ広島の「挑戦」する姿勢は変わらないし、森保監督が見据える視線の先にあるものも変わらない。そしてこの戦いには終わりがない。広島が目指す世界恒久平和の実現まで…
広島新サッカースタジアム取材班