広島市が考える「基町プロジェクト」には、「学びの場」「創造の場」「交流の場」としての基町アパート群の未来が明記してある、新サッカースタジアムはこの「場」に符号するものでなければならない
広島の新サッカースタジアム建設に向け「旧広島市民球場跡地案と広島みなと公園のレベルまでもっていく」(広島市担当者)ために当面の課題となっている、基町地区の中央公園(通称)へのスタジアム建設案を巡り、広島市を中心に県、広島商工会議所などと基町地区住民との話し合いが1月中に行われる運びとなっている。
ただしスケジュールはまだはっきりしていない。昨年末、松井市長、湯崎知事の両ツートップが揃って年明けの話し合い再開を示唆していたが、まだ市や県からの発表もない。
広島商工会議所の深山会頭が主導して、広島みなと公園か、旧広島市民球場跡地かの二者択一だったサッカースタジアム建設候補地にはっきりと中央公園が加えられたのは昨年9月14日の3回目の4者会談の時だった。
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それを受け、サンフレッチェ広島を除く市・県・広島商工会議所の担当者で構成する3者会談側の担当者が基町地区に説明に出向いた。昨年10月2日の話だ。
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昨年11月、12月は3者会談側と基町地区住民の接触はなし。10月2日以降、基町地区住民は自治会長らが中心となって、3者もしくはサンフレッチェ広島を加えた4者側への質問や不安に思ってることを投げかけるための準備を続けている。
その投げかけは数項目に渡るようで、例えば…
・騒音
・人と車の流れの問題
・中央公園に隣接する基町中・高層アパート群の今後の街づくり、コミュニティ作りとの整合性
・子どもたちの安全面やゴミの問題など環境の変化への対応策
・広域避難場所に指定されている中央公園とスタジアムについて
…などについて、声があがることが想定される。
11月6日の3者会談担当者側からの説明は広島市役所市民局の杉山文化スポーツ部長がおよそ1時間、説明する形で終わった。
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この時、「反対は8割以上」の声が自治会長らの間ではあがっていたが、今回はそのあたりがどうなのか?
現地で声を拾っていくと「保育園、幼稚園、小学校の父兄の中には反対する声が大きい」「保育園も幼稚園も小学校も市立だから関係者は反対しないが、PTAなどでは疑問視する声が多数」などと言う話もある。
広島市では昨年7月以降、基町小学校の冷暖房施設工事を行った。もしサッカースタジアムが中央公園にできるとすれば、基町小学校は文字通り、目と鼻の先という位置関係になる。
住民からは「スタジアム大歓迎」の声もあがる。
基町小学校でサッカーの練習を続ける地元のクラブチーム。年齢構成を見るとシニアも多いが「ぜひ、中央公園にスタジアムを!」との思いが強い。
また、空きテナントがかなり目立つ高層アパート群の中央に位置する商店街の関係者は総じて「スタジアムができれば活気が生まれる」と期待感を持ってこの問題に注目している。
中央公園にサッカースタジアムを整備する場合、地区住民が不安視する上記の課題などをクリアしていく諸策が求められる。
中央公園へのアクセスは「車」を考えた場合は多くの困難が伴う。よって徒歩や自転車でのアクセスがカギを握る。
現状の交通体系を考えれば東西軸での人の移動は限定的で、紙屋町のある南と白島のある北、この南北軸が人の移動の本流になる。基町高層アパート群と基町小学校は南北軸の北側の”玄関口”に当たる。ここらが動線改良のためのまず第一歩となる。
ところでひろスポ!広島新サッカースタジアム取材班では、昨年11月12日に基町小学校体育館で開催された「広島基町高層アパート群と大髙正人、基町プロジェクトシンポジウム2016」の聴講や、高層アパート群の中に活動拠点を持つ基町プロジェクトM98 訪問などを通じて基町アパート群など基町地区の特性を探っている。
1月4日付中国新聞に「ここが舞台基町アパート」という特集記事が掲載された。恒例羽化率46パーセントで半数はひとり暮らしとあった。
基町プロジェクトシンポジウム2016などを通じて集めた資料にも次のような「数字」や「分析」がある。
基町プロジェクトシンポジウム2016資料より
基町地区の総人口は2014年12月時点で4502人。しかし1月4日中国新聞では2016年4月現在で4266人。どんどん減少している。現在、この地区にある県営アパートが取り壊されている影響も大きい。
それにしても「外国人口」が880人、19・5パーセントは広島市内では突出して多い。基町小学校の昨年春の新入生はたった6人だった。そのうち4人は中国国籍。そういう現状がほとんど知られていない。
基町地区の特性をどこまで把握して深山会頭は中央公園案をプッシュしたのか?広島商工会議所メンバーはどこまで基町地区の今後に向けた妙案を持っているのだろうか?
築後40年あまりの基町アパート群は老朽化とさびれた感が際立つ状況で、そのためやたらと「活性化」という文字が資料などでは目につく。一方で基町プロジェクトシンポジウム2016では専門家から「空いたままにすることへの意義」を強調する声もあがっていた。要するに基町アパート群は戦後の”緊急回避的”な巨大建築物であり、広島の将来を見た場合、旧広島市民球場跡地もその北側の広島グリーンアリーナがあるゾーンも、基町アパート群もすべて大きな建築物のないランドスケープにするのが理想、との考え方だ。
だが、実際にこの界隈で生活する人々にとって、その広島の未来像は当面、関係のない話である。よって、やはり以下のような「活性化策」が図られようとしている。
基町プロジェクトシンポジウム2016講演使用の資料より
・多世代、多様な世帯の居住促進
・高齢者等が安心・快適に暮らせるまちづくり
・子育てしやすいまちづくり
…とある、さらに…
基町プロジェクトシンポジウム2016講演使用の資料より
・若い世代を増やす
・外国人・帰国者との共存・交流
・団地共用空間や周辺環境を生かす
・基町の資源再発見
・商店街活性化
…なども挙げられている。
これらの項目と、中央公園にレイアウトされる新スタジアムが異質のものである、ということはありえない。距離が近すぎるからだ。
もっと言えば中央公園における新スタジアムは広島の戦後復興の礎となった基町アパート群と同化する、あるいは基町アパート群が新スタジアムを取りこむ形にならないといけない。さらにその南側に城南通りを隔てて並列する広島グリーンアリーナなどとの融合も必要になってくる。
基町地区住民との話し合い、は単に「うるさいから」とか「危ないから」ということではなく、そうしたしっかりとした大きなコンセプトが必要になってくる。
そこは広島市が中心となり、当事者の一角を担うサンフレッチェ広島や広島市民の声に耳を傾け、明確なグランドデザインを示す必要がある。
一方で、欧州視察などで積極的な姿勢を見せているサンフレッチェ広島としては、スタジアムを作る時の大原則、「サイトプランニング」の考え方(周辺環境と融合したスタジアム作り)に沿って仮に中央公園案を詰めていくならば、基町アパート群との関係性が最初のカギとなってくる。
広島新サッカースタジアム取材班
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