今回、広島では最後になるメディアの取材に応じる川辺駿
スイス・スーパーリーグ参戦の川辺駿「日本人としても広島を代表して行く選手としても大きな舞台で頂点目指し、そこからの風景を見てみたい」
Jリーグからスイス・スーパーリーグに活躍の舞台を移すMF川辺駿が7月5日、生まれ育った広島をあとにした。6日、スイスに向け出発する。
広島空港でメディアの取材に応じた川辺駿は、故郷に別れを告げる寂しさを押し殺すようにして、新天地への思いを新たにした。
「半年で、目まぐるしく自分を取り巻く環境が変わりましたね。スムーズに行くときはこうやって結果が出せて、海外移籍までたどり着くこともできます。逆にヨーロッパに行けば、活躍すればするほど、上にスピーディに行けると思う。それは自分しだい。みんなに育ててもらったことを感謝しつつ、いいプレーをしたいですね」
2018年に期限付き移籍していたジュビロ磐田からサンフレッチェ広島に復帰。そこから4シーズン目、コロナ禍の逆風の中での2シーズン目は3月25日、日産スタジアムであった国際親善試合、日本-韓国戦の86分にA代表デビューを果たした瞬間に加速した。
6月7日、W杯2次予選、タジキスタン戦(パナソニックスタジアム吹田)で代表初ゴール。広島に戻りホームゲーム柏レイソル戦を終えたあと、代理人を通じてのオファーがあった。移籍先は名門チーム、グラスホッパー・クラブ・チューリッヒ。
迷いもしたが、広島からヨーロッパへ、世界へ…は長年の夢。7月3日のホームゲーム、サガン鳥栖戦でサポーターと仲間たちに別れを告げ、翌4日の会見で広島での公式日程を全て終えた。
だが、この日、タクシーの窓から眺める広島の風景を見るとやはり感じるものがあったと言う。
「ずっと育ってきた場所なんで寂しいですけど、自分がそういう舞台に行くと考えれば離れなきゃいけない。また帰ってくることもありますし、成長して帰ってこれるようにしたいですね」
広島で下積みして、ジュビロ磐田での2015、16、17年の3シーズンでタフになった。だから、古巣復帰後の熾烈なポジション争いにも耐え、たくさんの悔しさも乗り越えてきた。
背番号8をつけた2020年シーズン、2年連続でリーグ戦全試合出場を果たしたことで下地はできた。
2013、14年、川辺駿がサンフレッチェ広島トップチームに昇格して1、2年目のシーズンだけ重なっていた森保一監督から声がかったのは偶然ではなく必然だろう。全てがうまく繋がり始めた。
「国内にいるより可能性は広がると思う」と言う川辺駿は新たなステージで自身の成長をさらに加速させようとしている。その結果として「活躍が認められればまた日本代表として日本に帰ってくる」と9月開幕のW杯最終予選やカタールでの本大会のピッチを見据える。
具体的に今、頭で思い描いている「順位」は「1位、2位、3位…」。7月25日開幕のスイス・スーパーリーグで1位チャンピオンズリーグ予選、2・3位ヨーロッパリーグ予選。そこに広島人の誇りを胸に乗り込むことができるか…
「上に行けば行くほど世界の大きな舞台があるので、一番の目標をそこに置いてやっていきたいですし、そこに立つことが日本人としても広島を代表して行く選手としても大きな舞台だと思うので、そこからの景色を見たいですね」(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)