田中聡(たなか・さとし)専門学校・美術予備校で講師をするかたわら、広島を中心にイラストレーターとしても活動中。カープやサンフレッチェのイラストを中心に、日々のあれこれをブログに掲載しています。tnksts.jugem.jp
大瀬良大地、その名の通り、マウンドを踏みしめ、その右腕を思い切り振り抜きチームの優勝戦線脱落の危機を見事に救う大仕事をやってのけた。
昨夜はヒースが7回無失点で完封リレー、今夜はルーキーの大瀬良が126球5安打プロ初完封勝利。広島ベンチ内に漂っていた巨人戦3連敗のどんよりした空気は一掃され、再び首位追撃の態勢が整った。
大瀬良は最後まで球威が衰えず九回、ブランコに150キロを投じて追い込んだあとカットボールでこの日10個目の三振を奪った。
味方打線の援護は初回、松山の適時打でもらった“スミ1”だけ。それでも五回までに許したヒットは二回の一塁線を抜くバルディリスの二塁打と四回の筒香の内野安打だけ。初めて外野に飛球を打たれたのが六回二死からのブランコの中飛と、快速球、カットボールで攻めまくるその”圧力“はやはりルーキー離れしていた。
口にはしないが悔しい出来事があった。前回、8月29日の中日戦(ナゴヤドーム)で六回までゼロを並べながら七回の打席で代打に堂林を送られた。
周囲はその交代に首をかしげたが野村監督は「逆球が多かった」と交代理由を説明した。この試合、三回以降、4イニングをパーフェクトに抑えて勝ち星からも見放された。
開幕前には「新人王」を目標に掲げ「シーズンを通じて一軍でチームに貢献すること」を誓ったルーキー右腕は、逆境をはねのけ、その手で自身の進むべき道を切り拓いた。
そしてこの先、どんなに苦しいこと、記念すべきことがあろうとも忘れられない夜を、赤く染まったレフト、三塁側のスタンドの記憶とともにその胸にそっと仕舞い込んだ。