広島市などが示した資料で、中央公園に建設する場合、スタジアム事業費は190億円とあるが、わずか2年で270億円にまで膨れ上がった、要するにこうした机上の計算はまったく意味がないことになる(画像説明)
広島のトップ3、湯崎知事、松井市長、広島商工会議所の池田会頭とサンフレッチェ広島の久保会長によるサッカースタジアム建設促進会議が1月30日に広島市中区であり、広島市が作業部会などと進めきたスタジアム基本案にGOサインが出された。
各メディアが一斉にその骨子を伝える中、建設費が「およそ230億円から270億円に膨らむ」こともさらっと?触れられた。が、これはスタジアム建設場所を巡って散々、迷走した中で最も重要な要素のひとつであり、関係者は本来なら市民・県民・サポーターにきっちり納得してもらうための説明責任を負っている。
2017年12月、広島県、広島市、広島商工会議所の名で出された「サッカースタジアムに係る各建設候補地の比較」には次のような表記がある。
本体建設費
広島みなと公園 180億円
旧広島市民球場跡地 260億円
中央公園 172億円
本体以外
広島みなと公園 12億円
旧広島市民球場跡地 なし
中央公園 12億円
合計
広島みなと公園 192億円
旧広島市民球場跡地 260億円
中央公園 190億円
上記の数字はいずれもおおよそのもの。広島みなと公園と中央公園は道路関連などで本体以外にそれぞれ12億円。旧広島市民球場跡地の場合は「高さ制限」があり敷地を「掘り込む」必要があるため、その費用が99億円以上かかると広島市は試算した。
旧広島市民球場跡地へのスタジアム建設案を独自に進めていた久保会長の建設費用を見ると、掘り込みのための費用をはるかに抑えられていた。広島市の示した掘り込み費用は高すぎた可能性がある。
一方で道路整備費の12億円は安すぎる。広島みなと公園で交通の円滑な流れを確保するためには新たな車両専用道の必要性が指摘されていた。12億円じゃなくて120億円ぐらい必要だったはず、である。
机上の計算で数字をコントロール、この比「比較」が出された当時、湯崎知事と松井市長は「広島みなと公園優位」を繰り返し主張していた。
その代表的な論拠が”旧広島市民球場跡地では高くつく”というものだった。
それから紆余曲折あり、けっきょく中央公園なら胸を張って190億円でできるはずだったものが、「230億円から270億」になった。資材の高騰などだけでは説明がつかない。
この調子だと、いざ、建設し始めたららもっと高くついた、となるのではないか?
二葉山にちょろっとトンネルを掘るだけでも、巨額の誤差が生じる湯崎・松井のツートップでは、市民・県民は油断できない。
今回の「270億円」は突っ込みどころ満載だし、予算の幅が大きすぎる。これは1月30日の時点で基本案を固める必要性に迫れたからであり、実際には決まっていないことが山ほどあることの裏返しでもある。
もちろん中央公園に国内外に誇るスタジアムを設置するからには、「複合」「多目的」の部分を熟考し、アクセスを最重要視しつつ整備する必要があり、事業費が膨らむのは当然と言えば当然の話だ。
ただし、旧広島市民球場跡地に建設していれば少なくともアクセスに関しては最小限の追加費用で抑えられた可能性が高い。すでにカープの本拠地だった旧広島市民球場時代に「3万人以上入っても30分でお客さんはすべてさばけた」(当時の市民球場責任者)という揺るぎない実績があった。
それにもかかわらず「比較」検討の際、広島市は「観客の滞留場所や動線確保が困難」との理由で旧広島市民球場跡地を候補地として必要以上に低く評価した。
この「指摘」をしたのは広島市からスタジアム検討について委任された学識経験者のひとりだったが、はっきり言って的外れ。だが、一度そういう発言があると、のちのちまでこうしてうまく利用されることにもなる。
細かいことを言えばキリがないが、長い時間をかけて「検討」してきた広島の新サッカースタジアムは、これまでの検討過程と今回の基本案において様々な矛盾を抱えてしまった。
貴重な時間や、新スタジアムでのプレーを熱望しながら広島のピッチを去って行った選手たちなど、我々広島人が失ったものがたくさんある。
広島より遥かにあとからスタジアム新設を言い始めた京都は、ついにサンガスタジアム京セラの完成に漕ぎつけ、あとは2月9日のこけら落としの日を待つだけとなった。
いたずらに無駄な時間を過ごした広島の人々は、中途半端な施設には明確にNO!の意思を示し、中央公園での「Hiroshima Peace Watersaide park ひろしまピースウォーターサイドパーク」(ひろスポ!の造語)を、真に価値のある空間とするために、厳しい目をこの基本案に向ける必要がある。
例えば基本案では、スタジアムは南北軸に沿って、3万人規模で設置、とあるが、それで本当にこの先、悔いの残らない世界に誇る器ができるのか?なぜ、学識経験者らが強く推している、原爆ドームから本川河岸を経由して中央公園へと向かう動線を軽視するのか?
そこにはまた、行政側などのいろいろな思惑もあるのだろう。しかし、言い過ぎるぐらい言ってもなお、190億円が270億円になる世界なので、まだまだ”この程度”では言い足りないことになる。
ひろスタ特命取材班