23年ぶりの優勝へ、負ければその先がない広島は、“最後”もベンチワークの差により直接、原巨人にトドメを刺された。3連敗した9月最初の地方遠征から前田健太の力投による1勝を挟んで5試合で4敗目。けっきょく勝負どころで「晴れた日のマエケン」以外の投手陣ではライバルに歯が立たなかった。
勝負の分かれ目は六回だった。五回まで2安打ピッチングの先発・野村祐輔が先頭の長野に右翼フェンス直撃の二塁打を許し一死三塁となって18打席無安打だった坂本に同点適時二塁打されると野村監督がすぐに動いた。
二番手は左腕の戸田。続く阿部は一ゴロに仕留めたが左対左のアンダーソンをフルカウントから歩かせて、村田に勝ち越し2点タイムリーを中前に落とされた。その後も中田、篠田、今井と継ぎこむ中継ぎ陣が全員失点した。
試合後、野村監督は「投手交代よりも点を取れなかったのが痛かった」とコメントした。
しかし野村祐輔で同点にされても、あのまま続投していればまだ1-1のままだった可能性はあった。大学時代から親交を深めていた巨人先発の菅野と野村祐輔のこの日の投げ合いは見ごたえ十分で、こういうケースでは先に先発がマウンドを降りた方のチームが負ける、と相場は決まっている。
ところが野村監督は続投をよし、とはしなかった。前回、9月2日の長野オリンピックスタジアムで野村祐輔が五回、阿部らに3連打され72球で降板となったその時のイメージもあるだろう。ただ、あの日と今夜の野村祐輔の球の威力、制球力、その気迫はまったく違っていた。
9月7日のDeNA戦(横浜)は先発の九里に2回3分の1、1失点で交代を命じて4-1から逆転負け。この時も二番手の戸田はグリエルにホームランを浴びた。
9月11日の中日戦(マツダ)では5回無失点のヒースに代えて投入した永川がいきなりルナに0-0の均衡を破るソロを打たれ1-2で競り負けた。永川は今、一軍にいない。
9月14日の阪神戦(甲子園)でも0-0のまま84球の九里から中田にスイッチして七回、福留の先制ソロから試合が動いて0-5で完敗した。
野村監督の早目の投手交代がことごとく裏目に出て、ペナントレース大詰めでこれで4敗…。
「点を取れなかった」攻撃に関しても野村監督の勝負手は打線の足を引っ張った。2度の二軍調整を経てもまったく打てる気配のないエルドレッドを一発を期待して六番に組み込んだが結果は四球、右飛、一発出れば同点スリーランの七回は空振り三振。今季、菅野に12の2、5三振と抑えられていた”空砲”に期待することにはやはり無理があった。
この日の菅野は、初回にロサリオに先制適時打されたことで逆に目の色を変えて広島打線を抑えにかかってきた。
その象徴的な場面が四回。先頭の丸をボールカウント1-2から内角147キロのストレートで見逃し三振に退けた。この試合の前まで10の5の3ホーマーと滅多打ちにされていた天敵に真っ向勝負を挑んできた。続くロサリオもスライダーで見逃し三振。この日の菅野の迫力に対抗できるのは、やはり野村祐輔だけだったのではないだろうか。
そして八回…。
広島の攻撃は二死二、三塁で打席に丸。ここで原監督は菅野から山口にスイッチして結果は遊ゴロ…。菅野対丸の4度目の対戦を回避する原監督の作戦勝ちで、広島は反撃へのラストチャンスを失い、巨人の優勝マジック10を自らの手でアシストすると同時に優勝の扉から手を引くことになったのである。