今でもラッシュ時に信号待ちの大型貨物、自家用車、バスなどで混雑する広島みなと公園北西角の交差点。供用開始区間の延伸が続く広島都市高速を利用する車両の増加が混雑に拍車をかけており、ここに3万人規模のスタジアム新設は「自殺行為」と言う関係者は非常に多い。
宇品・出島地区の物流を確保するための費用、200億円-
7月22日に松井市長、湯崎知事、広島商会議所の深山会頭の3者によるトップ会談で「広島みなと公園優位」としながらも建設場所を決定しなかった新サッカースタジアム建設問題で、関係者の発言などから注視すべき事実が判明した。
翌日7月23日付の中国新聞によると、旧広島市民球場跡地に建設する場合は206億円で、広島みなと公園は143億円。3万人を想定した規模のスタジアム本体の建設費用は140億円とある。
要するに旧広島市民球場跡地に建設するとなると「余分な費用が十億円単位でかかる」ということを、この資料を3者に提出した広島市・県の担当者(作業部会)は言いたいのだろう。
だが、実際はまったく正反対の金額になる。広島みなと公園にサッカースタジアムを新設するとなると、およそ200億円の道路整備費用がかかる、と関係者が証言した。
この問題に対してすでに昨年12月、宇品・出島地区の港湾関係者が県、市、広島商工会議所に対して、広島みなと公園に建設した場合の具体的な問題点を列挙し「反対陳情書」を提出している。
最大のネックは交通渋滞の悪化。大規模商業施設の集積と居住人口増加で今でもひどい渋滞が頻発している同エリアの混雑にさらに拍車がかかれば物流どころではなくなるからだ。
同じ広島市南区にあるマツダスタジアムはすでに周辺道路整備で後手に回った「大失敗例」(複数のドライバー)として知られている。
周辺住民、バス、タクシーの運転手やドライバーからブーイングの嵐が起こって久しい。元から大渋滞する県道に接して3万規模の集客施設を造れば至極当然の結果で、2万人前後のファンが集まるたびに大混雑を引き起こしながら何の手立ても講じられていない。
「1分1秒の正確性」を求められる宇品・出島地区はマツダスタジアムのある大洲地区とはその土地の特性が大きく異なっており「あとで何とかする、という広島市、県の手法」(関係者)は通用しなしい。
「我々は先に新たなインフラ整備、道路整備が行われたあとでないと絶対に賛成しかねる立場」と港湾関係者のひとりは明言し、「そのことはもう昨年末にもこの3月にも要望書という形で提出しているが、何の変化もない」と憤る。
広島市HP参照
www.city.hiroshima.lg.jp/www/sp/contents/1400714923427/index.html
それにしても200億円もの上乗せとなれば旧広島市民球場跡地への建設の比ではない巨費が投じられ、同時に長い年月が必要になる。
それは「早期実現」を熱望する市民・県民・サポーターの願いや、当然あってしかるべき5年後の東京オリンピックに広島市が「参画」するチャンスをミスミス放棄することにもつながる。
「周辺整備費用は別」という発想も通じない。 マツダスタジアム建設の際には「90億円で作る」と広島市の方で言いきった手前、スタジアムに直結する大型スロープの億の単位の建設費などを本体建設費から切り離して強行突破した。
しかし、スタジアム建設は周辺整備と一体化したものであり、切り離して考える方が無理がある。
200億円の道路整備費を上乗せすれば広島みなと公園へのサッカースタジアム建設費用はトータルで343億円。旧広島市民球場跡地より140億円近くも多くかかる計算になる。
(新サッカースタジアム取材班)