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2016年01月01日
編集部

旧広島市民球場跡地に一刻も早くサッカースタジアム新設を!その意義を2016年、年明けに探る(1)

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サンフレッチェ広島電車
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広島の街にはすでに広島スポーツが溶け込んでいる…

広島風景

 

ひろスポ!新サッカースタジアム取材班では、その”前身”の「CRAP永久保存版」出版活動や、ひろスポ!開設以来の関連記事などを通じて、「なぜ旧広島市民球場跡地にサッカースタジアムを建設することが広島にとって有意義なのか?」を報じてきた。

すでに、新サッカースタジアム建設候補地の対抗馬だった広島みなと公園は”死に体”同然、残ったのは旧広島市民球場跡地のみだが、同候補地では広島市がサッカースタジアムと並行して、緑地広場や文化芸術施設と組み合わせた屋根付き広場の整備を検討している。

広島市、サッカースタジアム建設候補地の旧広島市民球場跡地を“屋根つきイベント広場”として整備を検討(ドメサカブログ)
blog.domesoccer.jp/archives/52116196.html

旧広島市民球場とその跡地を巡る一連の流れは、広島市民であっても説明しきれないほど複雑怪奇な経緯をたどってきた。

新サッカースタジアム取材班では秋葉前市長の時代からその流れを細かく取材し、その都度、現状について報じてきたが、2016年の年明け、というタイミングをもって、その中から旧広島市民球場跡地へのサッカースタジアム新設に向け有意義な「記事」をピックアップして改めてこの場に提示する。

旧広島市民球場
原爆ドーム前からかつては旧広島市民球場が望めた、世界遺産とスタジアムが融合する奇跡のランドスケープを再現すれば広島のアイデンティティがさらに際立つ

CARP2011-2012永久保存版(2011年11月12日スポーツコミュニケーションズ・ウエスト発行)より

http://blog.domesoccer.jp/archives/52116196.html

あなたが広島を訪れてみたくなる理由

カープの本拠地、マツダスタジアム。メジャーリーグの風を感じるボールパークには、広島県内外から多くのファンが詰めかけるようになりました。それにともなってスタジアム周辺の街並みも大きく表情を変え始めました。一方で、戦後復興のシンボルでもあった旧広島市民球場は解体が進み、跡地の具体的活用策を探る動きが続いています。

広島都心部の東端に位置するマツダスタジアムと西端の旧市民球場は「県内外、さらには東アジア、世界中からの大勢の訪問客をもてなす」国際都市を目指す広島にとって大事なアンカー(船の碇、街の姿をしっかり固定してくれる)の役割を担う重要ポイントです。そこで「広島ビッグアーチ場内DJ」から広島市議会議員に転身した石橋竜史さんに「来て、見て(観戦して)、歩いて」魅力を堪能できる街広島、について語ってもらいました。(聞き手 田辺一球)

石橋竜史(いしばし・りゅうじ)

1971年長崎生まれ。生後まもなく広島へ。安芸郡府中町の小、中学校を経て広島国際学院高校では硬式野球部主将。卒業後、上京しホリプロ所属。1995年渡米。カナダのトロントに渡り多国籍FMラジオ局で生放送番組ディスク・ジョッキー。 1998年より広島を中心にフリーアナウンサーとして活躍すると共に、難病と闘う子供とその御家族を広島ビッグアーチ、サンフレッチェ広島戦に招待する「スマイル・シート」を発案。広島の街づくりをスポーツの側面から別の立場でも後押ししようと2011年3月の市議会選に立候補して初当選を果たした。広島市安佐南区在住。
サッカーキング関連記事
www.soccer-king.jp/sk_column/article/378869.html
松井発言暴露、石橋議員

 

県内外から広島を訪れてみたくなる理由?

田辺 秋葉市政が12年続き、松井一実市長にバトンが渡されました。以来「市民が誇れる広島に…」と松井市長が発言されているのを再三、耳にします。市民にとっては心強い言葉です。そのポイントになるのがマツダスタジアムのある広島駅周辺であり、旧市民球場跡地ということになりますね。

石橋 その通りです。松井市長は「二つの賑わい拠点を結ぶ楕円の街づくり」を強調されています。幸い広島駅周辺の開発は、スタジアム周辺でも新幹線口側でも、今後目に見えて進んでいくでしょう。広島駅南口側も着々と青写真は出来上がっています。Bブロック、Cブロックと呼ばれる再開発地区に進出する家電量販店なども決まり、こちらも今後の動きが活発化するでしょう。

ただ、今後の教訓として見落としてはならないのは「マツダスタジアムは中・長期計画に沿って誕生した施設ではない」ということです。旧広島市民球場の老朽化や2004年の球界再編問題などがカープ球団の安定経営に影響を及ぼしかねない状況となり、市民、地元財界などの声に押される形でマツダスタジアム建設にゴーサインが出されました。よって「貨物ヤード跡地に新球場を建設すること」は長いスパンで取り組む総合的な計画外の出来事だったのです。

もともと計画された流れの中で新球場が建設されたのであれば周辺のインフラ整備も平行して早く効果的に進んでいたでしょうし山陽新幹線という大動脈を挟んで南北に広がる再開発ゾーンの連携も目に見えて緊密なものとなっていたはずです。ところが今なお、先ほどから話に出てくる広島駅周辺の都市整備はバラバラに進んでいる感が否めません。

マツダスタジアム
マツダスタジアム竣工から7年が経過してもJR広島駅からのアクセス道は”仮設”のまま、歩行者道には屋根はもちろん段差さえない

「新球場はできたが、街の発展や周辺地域とのバランス調整はこれから…」ではダメなんです。二重投資や過剰投資などの経済的損失も生まれかねません。現在、広島市は広大な未開発用地をいくつも抱えています。広島大学本部跡地、出島沖埋め立て地、それに先ごろ廃港が決まった広島西飛行場跡地…。縦割り行政の課題が指摘される中、こうした広大な遊休地をいかに「横の連携」を密にして意義ある空間を創出していけるか?ただ、これは言うは易しで実際にやる!となるとなかなか…。そこには遅々として進まない現実があります。

後手に回る都市基盤整備、どうすれば動き出すのか

田辺 私が大学受験で訪れた30数年前の福岡市は広島と似たような印象でしたが、今では交通体系、都市基盤整備集の面で大差をつけられました。広島には何が足りなかったのでしょうか。

博多
勝ち組福岡の都市基盤整備はここ30年で一気に進んだ、画像はその仕上げとなったJR博多シティ

博多
地下開発のスピードも広島のそれとは比べ物にならない

博多
地上も整然とした街並みの天神地区、地下と一体となって街歩きしやすいインフラ整備が進んだ

博多
そして二輪車は地下に収容、福岡は国内有数の街歩きにふさわしい都市となりアジアとの人的交流も含めてますます都市が膨張しつつある

博多
早朝から「爆買い」のためキャナルシティにバスを横付けする海外旅行客

石橋 リーダーシップだと思います。対話路線は大いに結構ですが、そのあとどうするか?もうあとは選択の集中しかありません。すでに選挙によって市の舵取りを付託されているのが市長ですから、一定の期間が過ぎたら「これで行こう!」というのがあって然るべきでしょう。議員になって市の職員の方々ともずいぶん話をする機会が増え、さすが皆様は行政のプロフェッショナルだな、ということを痛感するようになりました。だからリーダーは街づくりにおいてもそんなプロたちの能力を存分に引き出す努力が求められます。

またここ数年の活動を通じて実感するのは打算的で私利私欲に走るではなく、純粋に「街を変えたい」と願っている住民、市民の方々が町中に大勢いらっしゃるということです。こちらから投げかければ一般企業、学生、地域住民のみなさんが「こうしたい」と次々に手をあげ、声も出す。行政はこうした意欲ある集団を取り込んで、実行に移すことが必要不可欠です。縮小経済が叫ばれて久しい今の時代、じっとしていてはますますジリ貧状態に追い込まれてしまいます。トライ&エラーでもいいから動く時期。今がその分岐点なのかもしれません。

スタジアムを訪れる人の流れを街中へと広げよう

田辺 実際、紆余曲折があった新球場建設もいざフタを開けてみれば3シーズン連続でカープの観客動員は150万人を突破!トライした成果が目に見える数字となって返ってきました。特に旧市民球場の時代と比べると相手チームのファンの数が格段に増えた印象があります。県外からのお客さんを広島に呼び込んでいる、ということになります。この流れを何とか街全体に波及させていきたい、と考えるのが自然の流れです。この点についてはどんな考えをお持ちですか?

石橋 大事なのは「広島のブランド化」と考えます。私もそうだったのですが、広島の学生は就職するとなると県外に流出してしまう。ならば、学生時代を県外で過ごしても「また広島に戻りたい」と思ってもらえるような「広島ブランド」があれば、広島の将来はぜんぜん違ったものになってくるのではないでしょうか。

例えば観光都市広島を考えた場合「見どころ」は最低3カ所必要、というのが常識です。平和公園、宮島、3つ目は…?私は平成18年、日本初の街歩き博覧会「長崎さるく博」に行ってみて思ったのですが、ああいうイベントは広島にこそぴったりじゃないかと…。博覧会の成功に手ごたえを感じた長崎では翌平成19年から長崎国際観光コンベンション協会が中心となって「長崎さるくフェスタ」を毎年、開催するようになりました。グラバー庭園や大浦天主堂などパンフレットに載っている場所以外にもたくさんある見どころを歩いて発見する楽しさがウリになっています。

平和記念公園

旧広島市民球場跡地周辺にも「街歩き」にぴったりのスポットがいくつも点在している

田辺 それは素晴らしい企画ですね。この界隈で言えば福山の鞆の浦のようなイメージでしょうか?それならカープの応援に来たファンの方たちも「翌日は街歩き」で広島を満喫できます。広島でカープのほかに確実な訪問客を期待できるのは、もうひとつのプロスポーツ、サンフレッチェ広島ですね。石橋さんとサンフレは切っても切り離せない関係ですがサッカーはホーム&アウェーですからこちらも県外サポーターが確実に計算できますね。

石橋 はい、しかもサッカーはシーズンが野球よりも長く3月から12月まで開催されますよね。Jリーグでの地元興業は年間「25日」と言われていますが、それでも月に2回以上の計算です。先ほど、お話したように「広島のブランド化」を進めるにあたってはカープ、サンフレッチェに代表される「スポーツ都市」としての側面は当然、クローズアップされて然るべきだと思います。

Jリーグで動員力の際立つ浦和や新潟といった他都市でも住民の皆様はクラブチームを「街の誇り」としてとらえています。郷土愛と言ってもいい。広島で生まれ育った人も県外から広島を訪れた人もみなさんが「この街に住みたい、また来たい」と思えるような都市の舞台装置を平和公園、宮島に続いていかに生み出していくかが「広島ブランド」構築のカギとなるでしょう。

旧市民球場跡地を活用して広島ブランドの「切り札」に

田辺 そういう意味では先行投資した球場の動員力頼みになっているマツダスタジアム周辺地区の今後が大事になってきますね。そして、もうひとつ、冒頭でも出た「二つの賑わい拠点を含む楕円の街づくり」の西端のアンカーゾーン、旧広島市民球場の跡地活用策が「広島ブランド」創出の切り札になるのではないでしょうか?

石橋 同感です。「ブランド」とは他の都市にはない「広島らしさ」を言うのですから、あれほどふさわしい場所はないでしょう。世界遺産に隣接し、川の街ならではの立地にあり、さらには中四国最大の商業集積ゾーンである紙屋町、八丁堀地区に接していますからね。土地も物価も安い郊外へと人とモノの流れが移る中、どうやって都心部の魅力を高めていくのか。

元安川
川風の街、ひろしま。国内外に誇れる空間を「リ・ボーン」する起爆剤が必要で、その切り札が「マチナカスタジアム」

八丁堀地区では広島パルコの3号館出店が明らかになり、天満屋八丁堀店でも動きがあるなどひと足先に「リ・ボーン」が起こっている印象です。それだけに球場跡地を含んだ紙屋町地区の今後をどうするか、その「総合的なビジョン」を早急に絞り込んでいく作業が求められています。

田辺 その「ビジョン」について、秋葉前市長の時代に策定された青写真と市民感覚の間に相当のズレがあった、というのが率直な印象です。この点についてはどうお考えですか?

石橋 私は、紙屋町はもちろん大手町、幟町などなど、中心部に立地する企業や町内会などを直接、回ってお話を伺ってきました。そこで最も多かったのは「1日でも早く跡地が何になるのか決めて欲しい」というものです。球場が貨物ヤード跡地に移ることが決まったのは平成17年6月です。もう十分に待たされた、というのが皆様の率直な思いなのです。それに「将来は何が誕生するのか」ある程度は把握できていないと、次の動きがとれないと言われます。ごもっともな話です。

この他にも「街の中心部に広場が生み出されると街の中心から活気が失われる」「公園は夜間に広大な危険スペースとなるのでは」といった声はたくさん耳にします。

田辺 それでは秋葉前市長時代の跡地活用策の大前提が崩れてしまいますね。球場跡地の大半は広場となる計画で、そこで四季を通じてイベントを開催する、というものでした。

石橋 繰り返しになりますが「夜間は怖くて近づけないのでは?」と地元の方は本当に心配されています。私は広島市から当初、発表された活用案を行く先々で見てもらったのですが“賛成する人は皆無に等しい”といった現状でした。

田辺 同様の意見は当時、本通りで地元商店街が行ったアンケートや地元放送局のローカルニュースの中でも明らかにされていました。一方で、先ほどから話に出ているサンフレッチェ広島の新スタジアム構想はかなり高い支持を集めていたのが印象的でした。こちらの評判はどうなのでしょうか?

旧広島市民球場跡地
2015年1月17日18日に開催された島根ふるさとフェア、主催者発表で17万1000人もの来場者があったが賑わったのはこの画像の奥に屋根が見える広島グリーンアリーナ会場で、球場跡地は閑散…

世界遺産原爆ドームの隣でスポーツと音楽平和を形に

石橋 スタジアム構想については「もともとスポーツ文化を醸成してきた場所だから実績という面でも申し分ないのでは」という声はたくさん頂戴しました。私も市議会の若手グループで集まっては、球場跡地にスタジアムを建設するにはどういう方法がベストなのか?その青写真をまとめるための勉強会なども催してはいます。サッカー場というと「それだけ」という印象を持つ方が多いのですが、まずスタジアムの「箱」の部分には現在、旧市民球場周辺に散在している青少年センターや中央図書館などを合築する案を想定しています。

また「天然芝では一般利用などに制限がかかる」と心配される方も多いのですが、芝を管理する技術も今では格段に進歩しています。「Jリーグ以外で使用する300日以上を草サッカーやソフトボール、イベント開催のために利用できる」と指定管理業者の方から直接、話も聞いています。

サンフレッチェの試合のない日は市民利用などに開放して365日、賑わう空間を作ればいいのです。仮にそれが「公園」だとボール遊びさえ禁じられます。競技場であればスポーツでもスポーツ以外でも使えます。当然、コンサートも可能です。旧市民球場の時代に有料、無料コンサートが何度か開催されました。あの立地の良さですからスタンドは満員でした。有料イベントが成功すればそれだけ施設収入が増えて施設管理が容易になります。

そんなスタジアムを球場跡地にうまくレイアウトする。何もど真ん中に造る必要はありません。元安川との接点や原爆ドームとの接点を賑わいのあるゾーンとして最大限活用しながら、あるいは横川駅も含めた北のゾーンも意識しながらスタジアムの配置を決めて行く。横川駅は中四国地方でも4番目に乗降客の多い交通拠点です。活かさない手はありません。

本川
旧広島市民球場跡地西端から北を望む、左奥手にマンション群が見えるところが横川地区、新たに橋をかければJR横川駅と旧広島市民球場跡地は徒歩20分圏内になる

田辺 それだと先ほど我々の中でも盛り上がった「歩いて発見して楽しめる広島新ブランド」の発想にも合致しますね。Jリーグ観戦の前後で歩いて、あるいは広島の交通体系を考えた場合、自転車で川風を感じながら走り回るのも来訪客の人気を呼びそうです。広島県ではすでに湯崎知事の肝いりで自転車を活用した観光客誘致が始まっています。

石橋 夢は広がりますね!あとは、地元の切実な声にある通り、いかにして実際のアクションを起こしていくかです。松井市長は秋葉前市長時代の跡地活用プランを白紙に戻し、新たに検討委員会を設置して平成25年春までに跡地活用策の方向性をまとめようという方針を打ち出しています。ただ、周辺の地域住民を含め、多くの市民にとって結局「問題の先延ばし」の感は否めません。街のど真ん中に、すでに閉鎖されては1年以上が経過し、何も生み出さない広大な未利用地がそのままになっている状況自体、大きな経済損失です。ここはひとつ、松井市長のリーダーシップと「実行部隊」の機動力に期待しつつ、私自身も精一杯汗をかかせていただく、ということで今回の締めとさせていただきます。

田辺 ありがとうございました。いつか二人でマツダスタジアムとピースメモリアルスタジアム(仮称)をライトレールに乗ってはしごする日が来ますように…!

新サッカースタジアム取材班

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