昨年12月、優勝パレードの前に原爆慰霊碑に森保監督らとともに献花に訪れた久保允誉会長。旧広島市民球場跡地へのサッカースタジアム建設は、広島の心を世界に伝えるためにもふさわしい事業である、と訴えている。
4月27日付の日本経済新聞39面、広島版にサンフレッチェ広島の久保允誉会長への単独インタビューによる記事が掲載された。
その中で久保会長は、サンフレッチェ広島の示す旧広島市民球場跡地へのサッカースタジアム建設独自案に沿って整備を進めた場合、イベント開催やアマチュアスポーツへの一般利用などを含めて、年間100万人規模の集客が見込めることを強く主張している。
これまでは「年間20試合程度のサッカーでは人が集まらない」というが旧広島市民球場跡地へのスタジアム建設に否定的な見方をする関係者の定説となっていた。サッカー関係者らは「そうではない、さまざまな集客方法が考えられる」「ガンバ大阪の新スタジアムも多目的に活用され、サッカー以外でも集客できる」「欧州では多目的、複合型施設のモデルケースがたくさんある」などと反論してきたが、今回、そうした声を集約したかっこう。
サンフレッチェ広島以外にも広島では、女子サッカーのアンジュヴィオレ広島のなでしこリーグ2部公式戦、ジュニアから中学、高校、大学、社会人までの公式戦、その他アマチュアのサッカー競技は数多く開催されており、久保会長は年間で最大80試合開催できると説明。サンフレッチェ広島のゲームと合わせるとそれだけで100日以上のスタジアム稼働が可能になる。
これは今のマツダスタジアムがカープの公式戦以外では芝生の維持管理の問題もあり、極めて限定的にしか使用できないのとは対照的。夏の高校野球広島大会の主会場はかつては旧広島市民球場だったが、現在の広島市民球場(マツダスタジアム)ではその開催さえ先細りとなり、高校野球関係者からは不満の声が上がり続けている。
また久保会長はこの記事の中で、旧広島市民球場跡地へのスタジアム建設に否定的な松井市長らが懸案事項にあげている「武道場」(旧広島市民球場ライトスタンド後方の地下レベルにある)や「広島商工会議所」の移転について「不要」と説明。本来であれば、これらの施設の再整備も含めての論議を進めていきたいところではある。しかし、高さ制限に関係する掘り込みの付帯工事も不要な、コンパクトなスタジアム建設で「初期整備費は140億円で造れる」ことをアピールポイントに掲げ、まずは現実路線での計画進行を重要視する構えのようだ。
久保会長はこうした独自案の詳細について5月13日に自らが記者会見を開いて正式に発表する予定。3月3日の記者会見で示した「Hiroshima Peace Memorial Stadium」(仮称)のプランを、建設費や運営方法、スタジアム機能、市民・県民・サポーターのニーズとのマッチングの側面からより具体的に伝えることになっている。
なお日本経済新聞が広島のサッカースタジアム問題を詳しく伝えるのは今回が2度目。3月3日以降、広島以外の雑誌、新聞、電子媒体が次々に広島のスタジアム問題を取り上げているが、その発端となったのが3月19日付、日本経済新聞スポーツ面の、「新スタジアム紛糾」「広島、建設地決められず」「みなと公園有力視、県や市」「市民球場跡の独自案、クラブ」の見出しがついた、3段組みの囲み記事だった。
広島新サッカースタジアム取材班