サンフレッチェ広島、久保允誉会長の独自プランに関する2度目の会見(2016年5月13日)に集まった報道陣
サンフレッチェ広島、久保允誉会長の5月13日の会見を受け、クラブから会見内容をフォローする詳細資料もリリースされた。
ひろスポ!では、久保会見のポイントについて、今後、数回に分けてピックアップしていくが、サッカースタジアム問題の今日に至った原因、手法の拙さをきちんと理解するためにはクラブ側のリリースを熟読する必要がある。
以下、クラブ側の見解などを示したリリースをそのまま添付する。
株式会社サンフレッチェ広島(以下「当社」)は、本年3月3日、将来的にサッカーJ1・サンフレッチェ広島のホームグラウンドとしても活用させていただくことを視野に、広島市中区の旧広島市民球場跡地を建設候補地とする
「Hiroshima Peace Memorial Stadium」(仮)建設プラン(以下「本プラン」)を発表いたしました。
その後、広島県・広島市・広島商工会議所からなる作業部会(以下「作業部会」)から、
本プランの蓋然性を検証するためとして、主にスタジアムの具体的な仕様や多目的利用の方向性に関する「確認事項1」および主に本プランの整備費用の試算に関する「確認事項2」という質問群をいただきました。
確認事項2については3月16日付けで既に回答し当社HPにても公表しておりますが、確認事項1についての回答は、その公益性に鑑みて、弊社代表取締役会長・久保允誉(以下「久保」)から湯崎広島県知事・松井広島市長・深山広島商工会議所会頭に直接ご説明申し上げる機会(以下「四者会談」)を設定いただくように重ねて要請申し上げておりますが、いまだに実現しておりません。
このように四者会談による議論が深まらない一方で、当社には日々、全国のサポーターをはじめ、Jリーグやコンパクトシティ構想の推進をご検討されている全国の行政関係者の方々まで、多くの方々から本プランに対するご賛同を頂戴しており、その数も日ごとに増え続けております。
そこで当社は、広島県民/広島市民/全国のサポーターの皆様に対して、速やかに「確認事項1」に対する当社からの回答とともに、本プランにおける具体的な多目的利用に関する考え方を公開することこそが、本プランの目的でもある公益に適うものと判断し、本日、これら具体的な情報を公開することといたしました。
◆関係諸機関との交渉経緯
3月3日に本プランを発表した以降の作業部会との交渉の経過をこちらにまとめましたので、ご覧ください
(【URL】www.sanfrecce.co.jp/news/release/keii.pdf)。
この間、Jリーグ、広島県サッカー協会、日本サッカー協会といったサッカー関係団体からは本プランへの賛同を頂戴している一方で、当社から作業部会に対しては6回にわたり
四者会談の要請を行ってまいり、4月14日付け書簡では久保から直接、県知事・市長・商工会議所会頭にお願い申し上げましたが実現に至っておらず、この2か月半、実質的な議論の前進は見られておりません。
当社から配信したリリースとこれまでに送付した書簡については、以下をご覧ください。
【URL】www.sanfrecce.co.jp/news/release/160512.pdf
◆確認事項1への回答
(1)広島県立総合体育館の武道場、広島市こども文化科学館、広島市青少年センター、広島商工会議所、PL教団は移設するという案でしょうか。
広島青少年センターについては移転をお願いする計画となっております。これはスタジアムの南側に加えて西側にも出入り口を設けることで、旧広島市民球場使用時でも問題が指摘されていたスタジアム南側・電車通りにおける観客の滞留を防ぐ目的です。
また、スタジアムの一部が武道場に覆いかぶさっておりますが、建築基準法における一敷地一建物の原則につきましては、特例連担団地の認定をいただくことにより適合するものと考えております。
この根拠は平成25年11月19日開催の「第6回サッカースタジアム検討協議会」の席上、広島市がご説明された「旧市民球場跡地に限って言えば、実務上、県立総合体育館を含めたエリアを一つの敷地として設定することも可能」との見解に基づいております。
なお、平成25年11月19日の「第6回サッカースタジアム検討協議会」における広島市からの説明は、かつては広島市のホームページに記載されていましたが、現在は削除されております。
(2)作業部会の積算では、掘り込みなしでは2万人規模と想定しています。席幅〈記者席、VIP席など〉、コンコース、諸室、多機能施設、付置義務駐車場等の仕様を教えてください。
収容人数は座席の幅が46センチとして、およそ26,000席としておりますが、座席の幅を47センチとした場合でも、25,000席は確保可能です。 その他の仕様については(財)日本サッカー協会「スタジアム標準」に準じております。
付置義務駐車場については160台を確保しております。現時点ではスタジアム1F部分に約120台、ハノーバー庭園の一部を使い約40台の屋外駐車場を確保する計画になっておりますが、付置義務駐車場の確保は敷地外でも可能ですので行政との協議により、ハノーバー庭園を残すことも可能だと考えております。このような状況からも、当社は四者会談開催の必要性を痛感しております。
(3)コンサート、スポーツのパブリックビューイングなど1年聞を通じてイベント広揚としての機能を十分果たせるとされていますが、具体的な内容を教えてください。
ご回答にあたり、当社はスタジアムの指定管理者という想定ではない中での検討となっておりますことをお含みおきください。
現時点で具体的な内容までは詰めていませんが、ピッチでは芝の管理を考慮して年間最大80日を限度に、Jリーグの主催試合、少年サッカー教室や女子サッカー、年代別サッカーなどサッカー関連のイベントの開催が可能と考えております。また年に複数回のコンサートなどの音楽イベントも開催できると考えております。
次に、周辺には遊歩道も整備されておりますので、こうした旧広島市民球場跡地ならではのロケーションを有効に活用し、スタジアム内にロッカーやシャワー室を設置することで、ランニングやサイクリングをはじめとする県民・市民アスリートの基地にもなり得ます。さらに、既に当該地では様々なイベントが行われていることから、スタジアムにおいても、周辺に配慮しながら、イベントスペースとしての活用を考えております。
具体的には、スタンドの一部を利用した中規模イベントやコンコースやコンコース下を利用したマルシェなど様々なイベントや、付属設備、スタジアム周辺を利用した様々な拡がりが可能と考えております。
こうした多目的な活用を行うことで、年間100万人を優に超える集客も可能と見込んでおります。
なお、これらの具体的なアイデアについては5月13日に開示する資料で当社ホームページでもご説明しております。
なお、スタジアムの指定管理者に他の候補団体がいない場合は、当社が指定管理者としてスタジアムの持続的な価値向上に努める所存です。
(4)サッカー以外の球技が使用可能とあります。観客席からピッチまで5mということですが、ラグビーやアメフトは困難ではないかと思われます。どういった球技をお考えでしょうか。
他の協議団体とはスタジアムの建設が決まった後に議論を持ちたいと考えております。
サッカーに関しては、Jリーグに留まらず、女子サッカー、シニアも含めた年代別サッカー、障がい者サッカーなど、競技人口の圧倒的な多さとカテゴリーの多様さを背景に
様々な大会が存在します。新スタジアムには一年を通じて主要な国内および国際大会を誘致して「世界のサッカーの聖地」にし、同時に広島からの平和発信にも貢献したいと考えております。なお、その具体的なアイデアについては5月13日に開示する資料で当社ホームページでもご説明しております。
(5)整備費140億円はどのように積算された額かその内訳を教えてください。借入金45億円については、サンフレッチ工広島で資金調達される計画でしょうか。上下水道、電気などの地下埋設物の移設費用は含まれているでしょうか。
当社がスタジアムの事業主体者という想定ではない中での回答となっております。また、そもそも4月20日付け作業部会からの発表資料では、スタジアム整備費用の調達計画については、totoからの補助金30億円以外は白紙とされており、さらに、候補地毎関連工事費用概算(3万人規模)において地下埋設物の移設費用に約10億円を見込まれているところ、どの埋設物を具体的に移設されるお考えなのかも明らかにされておらず、当社としても詳細な試算は不可能な状況であることをお含みおきください。
さて、当方の試算については、先ず、全国16のサッカースタジアム(うち、6スタジアムがトラック併設)の一席あたりの建設費単価は63万1千円、うち、ワールドカップ使用スタジアム(含む、東京スタジアム・豊田スタジアム)を除く5スタジアムの一席あたりの建設費用は42万1千円となっており、これらの分析結果に加え独自に依頼したコンサルタントの意見やスタジアム設計の経験がある一級建築士などの意見をもとに、1席あたりの建設費用を50~60万円と定め、25,000人収容で整備費140億円としております。なお、スタジアム建設費用140億円(2.5万人規模)の一席あたりの建設費用は56万円となります。
事実として作業部会は各工事種別ごとに見積額を算出しスタジアム建設費160億円(3万人規模)、一席あたりの建設費用は53万円と発表されておりますので、作業部会と当方のスタジアム建設費についての考えに大きな差はないものと考えます。
(6)旧広島市民球場跡地及び広島みなと公園の収支計画の積算根拠を教えてください。
指定管理者が決まっていない現段階で回答することは控えさせていただきます。ただし、旧広島市民球場跡地にスタジアムが建設され、当社が指定管理者になった場合は、スタジアムの多目的使用を前提とした持続的なスタジアムの価値向上策を着実に実行することで、維持管理費用・土地使用料・45億円の当初借入金の返済などの支払いを行った場合でも、大規模修繕費用の積立金を賄えるものと想定しております。
(7)ガンバ方式と同じように、サンフレッチェ広島で建設後、公共に寄付し、その後指定管理で維持管理されるという前提でしょうか。事業主体、建設後の管理形態について教えてください。
本来、事業主体や建設後の管理形態を決めずに、スタジアムの場所だけを先行的に決めることを進めている作業部会に対して、我々は疑問を持っておりますが、旧広島市民球場跡地にスタジアムを建設するのであれば、基本的にはガンバ方式を想定すべきだと考えており、スタジアムを建設した後は、広島市に寄付することを考えております。また、指定管理者は、公正なプロセスを経て決定されるものと考えますが、他に引き受け手となる団体が現れない場合は当社が責任を持って引き受けたいと考えております。このような状況からも、当社は四者会談開催の必要性を痛感しております。
(8)県警と協議した際、歩行者の通行に支障がないようになどの指摘があります。スタジアム周辺の観客動線、滞留空間はどのようになっているでしょうか。また、避難経路 はどのようになっているのでしょうか。
もちろんのこと、安全性は十分に配慮しなければなりませんが、過去の広島東洋カープの試合運営の実績から十分可能だと考えております。それに加えて、スタジアムの南側に加えて西側にも出入り口を設けることで、スタジアム南側・電車通りにおける観客の滞留を防ぐことも検討しております。なお、作業部会の実現可能性調査では、「観客の滞留場所や動線確保が困難となり、一般の歩行者通行に支障が生じる」とありますが、滞留スペースの想定など、その根拠を示していただきたいと存じます。
(9)資料の提供 平面図、断面図など詳細図面などの資料提供をお願いします。
本プランのスタジアムの詳細は下記の通りです。
具体的な平面図は5月13日に開示する資料で当社ホームページでもご説明しております。
敷地面積 約52,350㎡
建築面積 約21,600㎡ < 許容建築面積 約27,300㎡
延床面積 約48,800㎡(うち駐車駐輪施設面積 約9,300㎡)
収容人数 約26,000席(席幅46cm)
※VIP、記者席 約300席
※席幅47cmの場合でも25,000席は確保可能
※日本サッカー協会に、25000席程度でも「なでしこジャパン、オリンピック、ユース年代などの日本代表、AFC主催の国際的な競技会を開催又は誘致することは可能」との見解を確認済
計画駐車台数 160台 > 附置義務駐車台数 158台
※対象面積 ÷ 250㎡/台
※対象面積=全体延床面積から駐車駐輪施設面積を除いた面積
◆4月20日作業部会発表の「実現可能性調査」に関する当社見解
細かい点は多々指摘可能ではありますが、大まかに以下の4点を指摘いたします。
まず実現可能性調査は、当社からこれまでの交渉経緯の中で、確認事項1への回答の用意があるとお伝えしていたにも関わらず、その回答の到着を待つことなく作成されたもので、スタジアムの主たる利用者である当方の意見を聞いていただけないという、本プラン発表前と変化がないまま作成されたもので、公益に適うものとは考えられません。
次に、内容についても、4月15日付け当社プレスリリース「サッカースタジアムの収容人数基準に関する日本サッカー協会からの回答書について」で開示したとおり、日本サッカー協会もスタジアムの収容人数は2万5000人規模で問題ないとの見解にもかかわらず、引き続き3万人規模にこだわった内容となっております。
さらに、スタジアム運営の収支についても、負債の拡大を前提にして事業規模を試算されており、その負債の返済についての検討がなされておらず、事業計画として杜撰な内容ととらえております。
最後に、港湾業者の方々も指摘されている広島みなと公園にかかる土壌汚染の真偽を含む
宇品地区の再整備計画など、広島県民/広島市民のために、スタジアムの具体的な実現可能性を議論する前に調査すべきことについては何ら言及がなく、公益に適うスタジアム建設を」との広島県民/広島市民の皆様の思いと、行政当局の考え方との間に、大きな隔たりを感じます。
◆今後の議論の進め方について
これまでも当社は四者会談の開催を重ねてご提案してまいったにもかかわらず、作業部会はその前提として「確認事項1」への回答が未到着であることを理由に、それを拒否されてきました。しかし、本日、上記の通り、スタジアムの公益性に鑑み、当社が現時点で検討可能な限りの内容で「確認事項1」への回答をお示ししました。
当社は、これ以上の具体的に検討を進めるためには、四者会談にて方向性を確認してからでないと不可能であると考えております。しかるに、作業部会が拘られていた四者会談開催の条件についても、本日、当社から回答をお示ししたことで、四者会談開催に向けての環境は整ったものと考えております。
当社はスタジアム建設の議論を深めるために、あらためて四者会談の開催を要望し、
今後、関係者が議論を尽くすべきと考えます。
サンフレッチェ広島からのリリースは以上。簡単に言えば、サンフレッチェ広島と久保会長側は、作業部会とこれまで文書でやりとりしてきた過程と内容、独自プランの詳細をすべてオープンにした、ということになる。
新新サッカースタジアム取材班