広島市よりあとに構想が持ち上がりすでに供用中の市立吹田スタジアム、ガンバ大阪が強い理由もよく分かる!
組織のトップが先頭に立ち、SNSとマスメディアを通じて情報を発信すると、これまでの流れが大きく変わり、あるいは瞬く間に事が収まる。
小池百合子知事の登場によって東京都は2020東京五輪や豊洲市場移転への流れに大きな変化が生じ、福岡市では街のど真ん中に突如として生じた巨大な穴を信じられないスピードで修復した。
福岡市の場合のキーワードは 「オール福岡」。事故発生翌日、福岡市の高島宗一郎市長は、”一時間でも早く市民の皆さんの日常を取り戻すことに加えて、この事故は全国だけでなく世界が見ているからこそ、日本の底力を見せるためにも早期復旧に力を貸して頂きたいとお願いしています”と自身のブログで福岡市の姿勢を明確にした。
その後も、進捗状況と一番大切な安全性についてもツイッターなどを通じて言及。事故発生当初「はらわたが煮えくり返っている。都市が成長している中で、事故が起きてしまうとは…」とコメントした、前九州朝日放送アナウンサーで42歳の福岡市のトップ。政令市国内5位、およそ156万都市の大事故に際して、できうる範囲での見事な”緊急回避”をして見せた。
広島市はどうか?
その力量が問われる典型的な事例のひとつとなっているサッカースタジアム問題。ひろスポ!には11月14日、明治大学 政治経済学部 経済学科4年の香川恭兵さんからレポートが届いた。
現在、取り組んでいる卒業論文のテーマは「広島における新サッカースタジアムの置かれた状況と他競技場の違いについての考察」。大阪の市立吹田スタジアムや北九州スタジアムと広島のケースを比較することにより、なぜ広島だけが遅々として進まないのか、を現在”取材中”だという。
その中から、現在ほぼ外観が完成し、観客席や内装、外構、設備関係の工事が進められている北九州の例について、その一部をまとめたレポートが届いた。
広島市では北九州市や吹田市より、遥かに早い時期にスタジアム建設の声があがり、両者に完全に追い越された。
その”罪”はいったい誰が背負うのか?
広島における新サッカースタジアムの置かれた状況と他競技場の違いについての考察
明治大学政治経済学部経済学科4年 香川 恭兵
1)現在に至るまで
10年以上も前から、サッカー専用スタジアム建設(以下、新スタジアム)を求める声は存在した。
現在サンフレッチェ広島が本拠地として使用するエディオンスタジアム広島は、1994年に開催されたアジア競技大会のために建設された陸上競技場であり、陸上トラックが存在するゆえ「見るスポーツ」としての施設の不備が指摘されていた。
加えて、アクセス性の悪さ(平均アクセス時間はJ1、J2に所属する計40クラブの中でワースト3位の66.7分)も相まってその声は根強く存在した。こうした状況を経て、2009年にMazda zoom-zoomスタジアム広島が開場したことを受けて一度は沈静化していた新スタジアム建設を望む声は再燃、2012年、2013年のサンフレッチェ広島の優勝および2013年から開始したJリーグクラブライセンス制度への対応へ向け、議論は本格化した。
2)現在の新スタジアムが置かれた状況
建設候補地としては広島みなと公園、広島市民球場跡地に加えて新たに中央公園広場が挙げられた。サンフレッチェ広島は広島市民球場跡地に建設を望む一方で、広島みなと公園にスタジアムが建設された場合は「使わない」と久保会長は明言している。
アクセス面が全く改善されず次第に観客動員数が頭打ちになり、2年で債務超過に陥るという試算が出ているからだ。
一方行政側は、これまでサンフレッチェ広島側の主張を退け、広島みなと公園優位と一貫して主張してきた。
2013年6月に組織され、18回に及ぶ議論が行われてきたサッカースタジアム検討協議会においても、新スタジアムのメインとなる使用者であるサンフレッチェ広島の代表取締役社長と県サッカー協会の幹部らが推薦する広島市民球場跡地への建設案は露骨なまでに排除された。建設場所を広島みなと公園にしようとする議論誘導に異議を申し立て、協議会の取りまとめ案の署名が拒否された経緯も存在する。
こうした中、9月14日に行われた広島県・広島市・広島商工会議所・サンフレッチェの4者トップ会談がおいて、中央公園広場が第三の建設候補地として挙げられた。立地面においては申し分ないが、ここでも隣接する戦後間もなく建設された集合住宅の自治体が新スタジアムで発生しうる騒音等の観点から難色を示している。
3)北九州スタジアムとの違い
広島のケースとの相違点として、特筆すべき点が2点あった。
1つ目に、行政側が新スタジアム建設に非常に積極的なことである。
北九州市は新スタジアムの発案から建設に至るまで、少なくない数の市民が建設に反対する中で、その理解を得るために市民説明会を150回以上、延べ5200人ほどの市民に対して行ってきた。
その理由は後述する。
2つ目に、新スタジアム建設を単なる「スタジアムづくり」とせず、「街づくり」の一環としてとらえていることである。
新スタジアムの入札が行われた際も、事業者に対して小倉駅新幹線口地区全体の活性化および賑わいの創出を図ることを目的に、エリアマネジメントへの積極的な協力、連携を行うことを義務付けている。
これは、1つ目で挙げた行政が新スタジアム建設に非常に積極的な姿勢が見られた理由にも関わる。北九州市は九州第二の人口と経済を誇る政令指定都市であるが、1980年の106万5千人をピークに人口は減少を続け、現在の人口は97万人であり高齢化も進んでいる。そういった人口減少を食い止めるべく、スタジアムを中心とした街づくりを行い賑わいを創出することで街の魅力を発信していく狙いがある。
北九州市建築都市局の下田憲治氏は、
「現在、わが市は人口が減っている上に、高齢化率も全国一となっています。今後、他の自治体と競っていくことを考えると、市の魅力を外に発信することが重要です。われわれが目指しているのは、他の自治体から注目されるようなスポーツ施設を作ることで、街ににぎわいと誇りが醸成されることです。そうすれば、おのずと自治体としてのブランドも上がっていくと考えています」
と述べている。
レポートは以上。
この続きが届くかどうかは分からない。だが、今回のレポートだけでも北九州市が「オールキタキュウ」(そういう言葉があるのかどうかは不明)でスタジアム問題に対応してきたその一端がうかがえる。
何より北九州の新スタジアムはもう完成間近となっている。市立吹田スタジアムはアクセスの課題はここでは述べないが、少なくとも国内で最高度の機能を有するサッカー専用スタジアムとしてすでに受け入れられている。
それでは広島市はいったいどうしたいのか?北九州市の場合「市民説明会150回」とあるが広島市が市民を対象に説明会を広く、公式に行った回数はゼロ。そしてなぜかスポットがあたる?ハメになった基町地区住民に対してもまだ1度だけ。しかも年内にはもう説明会は行わないという超スローペース、なのである。
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広島新サッカースタジアム取材班