画像は2024年10月12日、広島サンプラザホールであったプレゼンター島田慎二チェアマンによる年間優勝チャンピオンリングセレモニー、画像中央左が島田慎二チェアマン、中央右は寺嶋良
2013年に創設された広島ドラゴンフライズにとっての2024年は、ビッグイベント2発のメモリアルイヤーになった。
日本生命 B.LEAGUE FINALS 2023-24、 GAME3 、舞台は5月28日の横浜アリーナ。65-50の、らしさ全開のロースコアで琉球ゴールデンキングスを押し切った広島ドラゴンフライズは、ついにBリーグ王者の座まで上り詰めた。
ふたつ目のビッグニュースは10月17日に届いた。Bリーグが2026年にスタートさせる新B1「B.LEAGUE PREMIER(以下、Bプレミア)」のライセンス交付クラブを発表!今とはまったく次元の異なる新リーグに参加する22クラブの中に広島ドラゴンフライズの名前もあった。広島スポーツ100年にとっての大きなインパクト!国内プロスポーツのトップリーグに広島生まれ広島育ちのクラブがまたまた挑むことになった。
Bプレミアライセンス交付が決まった22クラブの内訳を見てみよう。
最も厳しい条件の1次審査をクリアした5クラブ
宇都宮ブレックス
千葉ジェッツ
アルバルク東京
川崎ブレイブサンダース
琉球ゴールデンキングス
2次審査をクリアした12クラブ
レバンガ北海道
仙台89ERS
群馬クレインサンダーズ
アルティーリ千葉
サンロッカーズ渋谷
横浜ビー・コルセアーズ
信州ブレイブウォリアーズ
三遠ネオフェニックス
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
島根スサノオマジック
広島ドラゴンフライズ
佐賀バルーナーズ
3次審査をクリアした5クラブ
富山グラウジーズ
シーホース三河
滋賀レイクス
神戸ストークス
長崎ヴェルカ
さらに12月19日には新たに茨城ロボッツと京都ハンナリーズの、12月26日には秋田ノーザンハピネッツと大阪エヴェッサの参入がBリーグから発表された。合わせて26クラブ。当初の10クラブ台止まりの予想?を大幅に上回り、現在24クラブのB1をも越えるという驚きの結末?になった。
確認のため簡単に説明を加えると、Bプレミアではチームの強さ(勝敗や順位)は度外視される。求められるのはアジア圏を巻き込み先行する各国リーグを猛追するためのスーパーエンタメ空間の創出。その夢を実現するために、5000人以上収容でVIP席などを備えたアリーナの確保や、平均入場者数、クラブ売上高などに参入基準が設定されている。加えて現在、競技成績によって実施されている昇降格制も廃止される。Jリーグ方式からプロ野球方式に移行される、と言えば分かりやすいだろう。しかもプロ野球の12球団の倍以上のチーム数で…
広島ドラゴンフライズを年間王者に導いたカイル・ミリングヘッドコーチは今季から群馬クレインサンダーズに活躍の舞台を移した。そのバトンを受け継いだ朝山正悟ヘッドコーチの下で2024-25シーズンのスタートを切った広島ドラゴンフライズは開幕5連敗といきなり10月に躓いた。11月には借金が8まで膨れ上がったが12月には一時期借金を3まで減らし勝率5割目前…と喜んでいたら2024年ラスト3戦を落とし借金6で年内の26戦を終了、年明け1月4日、5日にはホームの広島サンプラザホールに秋田ノーザンハピネッツを迎える。
年内26戦消化時点での数字を見ると、広島ドラゴンフライズはBリーグ西地区8クラブ中6位に沈み、得失点差-155と攻守のバランスが取れていない。東地区首位の宇都宮ブレックスは同+200、中地区首位の三遠ネオフェニックスは同+318、そして西地区首位の琉球ゴールデンキングスは同+196だから、広島ドラゴンフライズはすっかり水を開けられたことになる(何度も繰り返して申し訳ないが、Bプレミアでは強さ、よりその強さも含めたクラブの魅力、エンタメ力が求められる)。
一方でBリーグを代表して琉球ゴールデンキングスと共に参戦中の東アジアスーパーリーグでは、過密日程と海外遠征をこなしながらここまで3勝1敗でグループAの首位を行く。琉球ゴールデンキングスもグループB首位だ。
ここまで長々と綴ってきたのには訳がある。
Bプレミアは究極のエンタメリーグになる(広島県民は実はその流れを先取りしている、2月1日に広島の平和の軸線上に誕生したエディオンピースウイング広島はエンタメ装置を数多く備えて、実際、様々な舞台を演出している)。
Bリーグが設定する高い基準をクリアするアリーナの確保をどうするか?
広島ドラゴンフライズが今季Bリーグ開幕ゲームで乗り込んだ群馬クレインサンダーズのホーム、オープンハウスアリーナ太田は2023年に完成した新アリーナで現地でその風景を目に焼き付けた島田慎二チェアマンも太鼓判を押していた。太田市、オープンハウスグループ、群馬クレインサンダーズが三位一体(サンフレッチェ広島の誕生時からの精神と一緒⁉)となり地方都市での賑わい創造を進めている。
長崎ではサッカーJ2のV・ファーレン長崎のホームスタジアムである「ピース スタジアム コネクテッド バイ ソフトバンク」と併せて建設されたハピネスアリーナ(2024年10月14日、長崎スタジアムシティとしてグランドオープン、事業主体はジャパネットホールディングス)をホームとする長崎ヴェルカ(B1西地区5位の13勝13敗で2025年へ)が存在感を高めつつある。
同じく九州地区では佐賀バルーナーズのホームアリーナ、SAGAアリーナが2023年5月に誕生した。最大収容人員8400人の多目的アリーナで佐賀県が中心になって新設された。
国内新設アリーナの成功例の先駆けとなったのは2021年3月竣工の沖縄アリーナで、琉球ゴールデンキングスもやはり新たな舞台装置を強力な追い風にしてBリーグを代表するクラブに成長した。九州・沖縄地区だけを見ても新アリーナ熱は凄まじい。
翻って広島ドラゴンフライズはどうか?
端的に言えば新アリーナ建設への目途が立たないまま、Bプレミア参入基準をクリアするために、広島グリーンアリーナ(広島県立体育館)の暫定使用案でBリーグを説き伏せたかっこうだ。年が明ければ広島ドラゴンフライズは広島グリーンアリーナにスイートルームなど新たな施設を設置する工事を始める。地下1階には飲食のできるラウンジも設ける。(エディオンピースウイング広島での同施設を利用した人ならイメージできるだろう)事業費約3億円はクラブ負担で、設備は県へ寄付される。二重投資になるが背に腹はかえられない。
広島ドラゴンフライズは2025-26年シーズンから主戦場を広島グリーンアリーナに移し、そのまま2026-25のBプレミア元年を迎えることになる。すでに挙げた九州・沖縄地区のBプレミア勢と比べれば完全に後手に回ったことになる。もちろん後発の優位性もあるのでそこは十分に生かすことになる。
新アリーナ建設に向けて広島ドラゴンフライズは2020年9月にwebページをスタートさせ、今月になって(12月18日には)「夢の新アリーナ応援プロジェクト」を始動させた。
また、この夏には新アリーナが構想から大きく前進する可能性を秘めた出来事もあった。
一般社団法人広島イベント事業振興協会(Hiroshima Event Business Development Association=HEBDA、松本朋憲理事長)が8月9日、JR広島駅北口にある広島コンベンションホール(広島テレビ社屋内)で開催した「新アリーナ整備に向けた機運醸成プロジェクト第2弾」、「地方におけるスポーツビジネスの可能性~地域に愛される施設とは~」をテーマとする基調講演とパネルディスカッションで、ステージに上がった広島ドラゴンフライズの浦 伸嘉社長は、そのあとの囲み取材で「JRさん、今後その活用についてまだ決まってない、というお話をちょっとうかがっていますので、どうでしょうかね?という話をしてみたいと今、思ってますね」と語った。
その「活用がまだ決まっていない」土地は、現在サンフレッチェ広島のフットサルコートなどが仮設されている、かつてのJR西日本広島支社の立っていた場所を指す。要するに今、刻々とその姿を変えつつあるJR広島駅の新幹線口の正面に位置する一等地だ。
勝手に想像するに、浦 伸嘉社長はかなり前からその好立地に熱視線を送っていたに違いない。新たなエンタメ空間は当然、コンサートなど屋内各種イベントでも使用される。稼働率を高めて収益力を増すことでクラブ経営は安定し、同時に地域や関係企業への貢献度もアップする。
広島では過去、2度に渡って新球場、新スタジアム構想が長らく迷路に迷い込んだ苦い過去がある。いずれも建設候補地を絞り込むことに手間取った。旧広島市民球場から「新球場」(マツダスタジアム)への移行は遅々として進まず、2004年に近鉄球団が消滅するという球界再編の嵐の中で、「わしらのカープ」も当時のダイエーホークスに吸収合併されるという危機に直面すると、そこでやっと広島市が重い腰を上げ、5年後の2009年にマツダスタジアムが完成した。
1993年のJリーグスタート時から言われてきた「新サッカースタジアム」構想もやはり遅々として進まなかった。2013年12月3日にあった地元メディアの懇親会では松井一実市長が「サンフレッチェ広島は2位でいい」とJリーグオリジナル10に対して屈辱的な発言そして、クラブ関係者、広島県民の心に火を点けた。そのあと湯崎英彦知事と松井一実市長の「新スタジアム宇品案優勢」の声をみんなの力で押し返し、紆余曲折の末2019年2月6日、広島県、広島市、広島商工会議所、サンフレッチェ広島の4者で、スタジアムの建設地を広島中央公園とすることでやっと合意した。そこからやはり5年後の2024年2月にエディオンピースウイング広島が供用開始となった。
今度の新アリーナ構想も、建設地が決まらないといつまでも先には進まない。
前出の広島イベント事業振興協会は11月22日、広島ドラゴンフライズなど関係者に声をかけて「勉強会」初会合を済ませると、12月11日には広島ドラゴンフライズの試合会場(広島サンプラザホール)で、JR西日本の所有地に新アリーナ建設を求める署名も始めた。試合前にはカープの新井貴浩監督がコート上で署名するパフォーマンスを行うという念の入れよう?だった。
署名は10万人を目標に2025年5月末までオンライン上でも行われて県やJR西日本などに提出する流れになっている。
ただ、地元メディア関係者からは「署名活動?なんかピンと来ない」という声も上がっている。建設中止を掲げて当選した長坂尚登市長に対して”中止の中止”を求めて市民団体が約13万4000人の署名を提出した愛知県豊橋市のケースのように「目的」が明確な署名とはかなり状況が異なる。現在、国内には九州・沖縄地区以外でも複数の自治体で新アリーナ建設に向けた動きが活発化しているが、「署名」「新アリーナ」検索でヒットするのは豊橋市以外では岡山だけ、だ。
また関係者の中からは「新アリーナは街の真ん中がベスト」と、別のエリアを推す声もある、という。
当り前の話だが、新アリーナを建設しようと思えば場所と建設費用と施設管理・運営者が必要になる。広島ドラゴンフライズが目指すのは「民設民営」での新アリーナ。となれば2024年5月に開業した千葉ジェッツの新本拠地「LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)」が千葉ジェッツのオーナー企業であるMIXIと三井不動産との共同事業で実を結んだように、大手ディベロッパーの参画が必須となるが、そのバランスが難しい。国内では資材費高騰などの逆風をモノともせず、空前のアリーナ建設ラッシュとなっている。(これだけ匂わせれば懸命な読者のみなさんならバックに誰が存在しているか分かるのでは?そう、またあの人だ)
浦 伸嘉社長は2030年シーズン開幕を「新アリーナ」で迎えることを目指すという。ならば年が明ければ残るは5年。広島での新空間作りに必要な期間は5年だから、構想の具体化は待ったなし!となる。(ひろスポ!広島スポーツ100年取材班&田辺一球)
参考”文献”
エスコンでBリーグ、型破りなライブスポーツエンタメが実現したことの意味|島田慎二
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