4月14日、雨の中のプレーボールとなったヤクルト対広島4回戦は二回を終えた時点で中断10分間を経てノーゲームとなった。
ヤクルト成瀬、広島大瀬良。無失点ピッチングを続けていた両先発が試合後「残念です」と話したのは言うまでもない。
だが、このふたり以上に「やりたかった」のがこの日、スタメン「五番ファースト」に名を連ねた広島の新井貴浩だろう。
初回、雨脚の強まる中、二死一、二塁の先制機ではショートフライ。思わず雨空を見上げて一瞬、悔しそうな表情を見せた。
8年ぶり広島復帰の新井は開幕前に右肘を痛めた関係でしばらく代打に甘んじていた。
スタメン出場は7日の巨人戦(マツダ)が最初。2度目は11日の阪神戦(甲子園)で今回が3度目。すでに復帰後初安打や初打点は記録しているが、まだホームランが出ていない。
その待望の一発がこの坊ちゃんスタジアムで飛び出す可能性は十分にある。
遡ること13年。2002年7月13日、四国4県では初開催となるオールスターゲームが坊ちゃんスタジアムで行われた。
その3日前に広島の松田耕平オーナーが他界。ドラフト6位入団から主力選手へと成長し、球宴初出場となった新井は喪章をつけて試合に臨み、両翼99・1メートルのレフトスタンド上段に大アーチをかけた。
しかもこの夜は強風が吹き荒れ、一流選手の打球も外野へ上がれば失速…の繰り返し。そんな中、新井は試合前「できれば一発!」とテレビカメラに向け真顔で話し、”予告ホームラン”を見事にやってのけたのだった。
今回、気合い十分で臨んだ坊ちゃんスタジアムでの初戦は相手の先発が左腕の成瀬だった。第2戦予告先発は右腕の石山だが、広島の緒方監督が、この新井の並々ならぬ”空気”に気づき、2戦連続でスタメンに抜擢するようだと、新井の打席からは一瞬たりとも!?目が離せないことになる。