囲み取材に応じる松井市長(画像は3月29日のもの)
5月14日、サンフレッチェ広島の久保允誉会長が旧広島市民球場跡地への建設を想定したサッカースタジアム独自案の詳細を発表した。
会見に臨んだ新聞記者、放送局ディレクターらはその後、広島市の松井市長、広島県の湯崎知事、広島商工会議所の深山会頭ら、関係者の声を拾って翌日の紙面などで伝えた。
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…では新聞各紙やテレビニュース報道で伝えられた松井市長、湯崎知事、深山会頭の「3社会談」側のリアクションを紹介した。
だが、紙面やテレビニュースではありのままの声をすべて伝えるわけにはいなかい。また、その場の空気感までは読者、視聴者に伝わらない。
それでは松井市長の会見はどんな様子だったのか?
松井市長の「ぶら下がり会見」は久保会長の会見があった5月13日の午後5時過ぎから広島市役所内で行われた。当初は同日の午前10時15分から午前11時まで、市役所会議室で「オバマ大統領の広島訪問にういて」という代表質問に続き「サッカースタジアムの検討について」という代表質問が用意されていたが、それが中止となり「久保会長の記者会見を踏まえ、当日17時から」に変更された。久保会長が午前11時から会見することは最初から分かっていたことなのに、最後の最後で会見時間が変更された。
なお「ぶら下がり会見」とはよく国会記者らが大臣を囲んでメモをとっているアレである。カープの緒方監督が番記者に囲まれるのもそうだ。
通常「ぶら下がり」は取材対象者の周りを報道陣が取り囲む。
しかしこの日の松井市長の「ぶら下がり」は「ぶら下がり」にあらず…。机が用意され、その上にはおそらく久保会長の会見で配布された資料、その他の資料が並べられ、松井市長はそれに目を通しながら、記者たちの質問に答える変則の形となった。しかも17分遅れのスタート。放送局にしてみれば夕方ニュースから逆算して、オンエアに間に合うぎりぎりの時間…。「わざと遅れたのでは?」との声も上がっていた。もうそれだけで異様な雰囲気ではある。
さらに代表質問は中国放送…。午前中の久保会長の会見時にも中国放送、中国新聞の両者は、久保会長にこちらが首を傾げたくなるような質問をしていたのだから、締切前の担当者はさぞかし大変だったろう。
そんな中、代表質問でも資料に目を通しながら「ぶっきらぼうに」(担当者の声)に応えていた松井市長の声にいっそうイラだちが混じった瞬間がある。
「住民投票」について午前中、久保会長が言及したことについて「どう思うか?」と尋ねられた時のことだ。
「住民投票」はまさに市民の”最終兵器”だろう。そして広島市サイドはこの”最終兵器”もまた躍起になって潰しにかかってくることになる。かつて「旧広島市民球場解体」の是非を問う住民投票を市民団体が広島市に打診したことがある。しかし「住民投票で定める重要事項に当たらない」と門前払いされた。
さて、松井市長のぶら下がり会見での、その他の発言の主旨を分かりやすく伝えると「きょうも一方的に140億円で寄付する、と言っても寄付を受け取る方も難しい」「青少年センターの移転、勝手なことは困る」「そこに青少年センター移転の費用は入っていない、税金を使うかどうかウヤムヤ」、「理想論でこれだけお客が入ると言っても…」といった具合。
「寄付」とは本来、寄付したい側が申し出て、受け取る側もその気持ちにまず感謝して、そこから調整していくもののはず。まったく感謝の言葉もない、というのはどういうことなのか?しかも広島市や県の持ち出しゼロで140億円以上の寄付があるというのに、だ。誰が市長でも「それならどうやってうまくまとめるか考えましょう」となるのが普通だろう。
松井市長は広島市議会にこの先、どう答弁するのか?広島市にスタジアム建設に回す資金などないはずだし、松井市長がマンションなどの私財を処分したところで140億円にはならないだろう…。
また「理想論」というならば、ここに至るまでに取材した、3社会談と作業部会以外の関係者の声からして、広島みなと公園案の方がよほど現実(Jリーグの現実、市民・サポーターニーズの現実)に背を向けた「理想論」(宇品界隈に新たな賑わいの場を作るということ)になってはいないか?しかも宇品界隈の港湾関係者は「賑わいはいらん!」と言い切っている。また宇品地区の住民が「賑わいがぜひ欲しい」とも言ってはいない。大型商業施設など、住民のニーズを満たすスポットはすでにかなり充足された感がある。
松井市長はこの日、報道陣を前にして「現時点で打開策はない」と言い切った。「サンフレッチェ広島は2位でいい」「3度優勝すればサッカースタジアム建設を考える」と、これまで散々迷走してきたこの種の発言と、久保会長の会見内容には共通項で括れる部分がほとんどない。
原点に返るが、いったい誰のためにサッカースタジアムを造るのか?サンフレッチェ広島、アメリカのオバマ大統領もやってくるこの広島において他都市のJクラブと代わり映えのしない単なるサッカープロ集団なのか?
最後にひとつ。松井市長も、湯崎知事も一度も「サッカーを通じて広島から世界平和を!」と一度も言ったことがない。この”非紳士的行為”は、スポーツ都市広島の首長としてはイエロー、いや場合によっては”不正行為”で一発レッドとなるのではないだろうか?
広島新サッカースタジアム取材班