画像はドイツの首都ベルリン郊外にある、オリンピアシュタディオンでひろスポ!現地取材班が撮影、御存じ「リョービ」は広島県府中市発祥のグローバル企業、サッカーを考える場合には基準は世界、だ
広島市中区の中央公園に新サッカースタジアムを建設するための基本計画案とりまとめの参考にしようと、広島市では11月22日から30日の日程で海外視察を組んだ。
視察は順調に進んでいるものと思われる。
11月20日、広島市の都市活性化特別委員会が開催され、委員から海外視察に関する質問以外にも大まかにまとめると次のような声が上がった。
・中央公園がスタジアムを南北軸でレイアウトするには「狭小」なことについて
・松井市長が1億円を目標にした寄付が短期間で目標額をクリアした、その後をどうするかについて
・スタジアム駐車場、サブグラウンドについて
・施設の管理・運営も含めて公と民でどう分担するのかについて
・190億円という数字が出ている建設費について
・スタジアム建設には反対の立場を変えていない基町地区住民に関することについて
…等々
そしてスタジアムの一番のテーマ、その規模をどうするのか?についても質問が出た。
吉瀬康平委員(共産党)。4月の市議会選挙で元区長を抑え東区で初当選した。1987年東京都生まれ、趣味はフットサル。
その質問内容はきっちりゴールの枠をとらえていた。
まず、海外視察の訪問先などが議題になっていた際には、「3万人収容が2つ、4万がひとつ…」とその規模を例に挙げながら、視察団の目的について尋ねた。
訪ねたスタジアムは6つ。
オランダのヨハン・クライフ・アレナは5万4000人規模
同じくフィリップス・スタディオンは3万6000人規模
ドイツのエスプリ・アレナは5万5000人規模
同じくバイ・アレナは3万人規模
イギリスのトッテナム・ホットスーパースタジアムは6万2000人規模
同じくスタンフォード・ブリッジは4万1000人規模
今回の海外視察は5月30日、松井市長、湯崎知事、広島商工会議所の深山会頭(当時)の3者によるサッカースタジアム建設の基本方針が策定されたことを受けてのものだ。
そこにはスタジアムの規模に関してこう書いてある。
観客席3万人規模とする。
それなのに視察するスタジアムの中で同規模はひとつだけ。その理由について、北山孝文スタジアム建設担当課長が「多機能複合型という視点から…」などと説明したことはこの連載の第2回で紹介した。
吉瀬委員はスタジアムの規模にこだわっているようだった。そのあと、海外視察の話とは別のタイミングで、ワールドカップ、サンフレッチェ広島のACL決勝トーナメントなどでも使えるスタジアムにするのか?と資した。
北山課長は4万人以上がクラスSで、3万人以上がクラス1であり…と説明した。
このことは当然ながら、”最初”から議論されてきた。
秋葉市長からバトンを受けた松井市長が「早期実現」を願う38万署名に押されてスタートしたにもかかわらず建設場所すら決めることのできなかったサッカースタジアム検討協議会(2013年6月から2014年12月)が最後に発表した「最終とりまとめ」にもそのことはきっちり記されていた。
サッカースタジアム検討協議会の最終とりまとめより抜粋
上記のクラス分けにあるとおり、仮にFIFAワールドカップ本大会を日本が開催する機会に恵まれたとしても、”また”広島はその機会をミスミス逃すことになる。
この連載の第3回で紹介した当時の平岡敬市長や市の担当者らの痛恨のミスによる夢のW杯開催地からの落選の悲哀をまた味わうハメになる。
クラス1は2万から4万人。3万人はスタジアム規模のクラス分けで言えば、一番中途半端、となる。
そして、この最終とりまとめでは、適性規模として…
・国際大会の誘致が可能になることが求められる
・世界に誇れるスタジアムになることも求められる
・3万人規模を超えるスタジアムが国内に4カ所と少ないこと、西日本では3万132人収容のノエビアスタジアム神戸しかないこと、2015年秋完成予定の吹田市のスタジアムが4万人収容であることを踏まえて3万人規模以上が適性と判断する
…としている。
さらに…
・将来的な拡張も視野に入れつつ協議会では適性規模を3万人とする、と結んでいる。
(この項つづく)
ひろスタ!特命取材班
広島市海外視察(11月22日~30日)訪問先
オランダ
ヨハン・クライフ・アレナ(アムステルダム)
名門、アヤックスのホームスタジアム。旧アムステルダム・アレナ。1996年開場。約5万4000人収容で規模はオランダ最大。スマートピッチ監視システム採用。世界でも類を見ない独自の最先端システムでとされるピッチの状態と品質を常時監視する。
2008年、Jリーグが「欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査」を実施した際、対象になった。それによるとスタジアムは新設で204億円。民が44%、公が30%負担。施設所有はSPC(管理は第3セクター)で売り上げ50億円でサッカー70%。7期連続黒字。立地はマチナカではない。市の再開発計画がスタートであり、都市の再開発と連動した成功例。
フィリップス・スタディオン(アイントホーヘン)
PSVアイントホーフェンの本拠地。1913年開場で再三、手が加えられてきた。約3万6500人収容。やはりJリーグの2008年調査の対象スタジアム。その資料によると、クラブ主導型で建設。建設費約274億円はクラブ負担。土地もクラブ所有。クラブ親会社で照明分野で世界的に知られるロイヤル・フィリップスの競技場用LED照明器具「ArenaVision LED」を完全装備。これにより、コンサート、サッカー競技での特定のピッチ演出などが可能になった。メンテナンス、コスト面でも優れる。
ドイツ
エスプリ・アレナ(デュッセルドルフ)
こちらはJリーグ欧州スタジアム視察2017の対象スタジアム。開場は2004年、収容人数は約5万4600人、所在地デュッセルドルフの人口約60万人。1974年西ドイツ・ワールドカップなどで使用されたラインシュタディオンを解体して建設された。デュッセルドルフのホーム。
Jリーグ資料によると、建設費約232億円。デュッセルドルフ市が所有。ホテルとの複合でメッセ施設併設、屋根は開閉式。地下鉄駅直結。中央駅から地下鉄で18分。チケットがあれば無料。デュッセルドルフ空港から車で10分、高速道路、バスのアクセスも抜群。駐車場22,000台。スタジアムそばにクラブ練習用グラウンドもある。コンサート、ボクシング、マラソン、パブリックビューイングなど幅広く行う。
スタジアムの運営には市が50%出資。残りはメッセ運営会社が出資。クラブは試合日にスタジアムを借りる形。
広島が参考にすべき点が山盛りか?サンフレッチェ広島のスタジアム総合戦略推進室長 信江雅美氏も17年の視察で現地を訪れている。
バイ・アレナ(レバークーゼン)
1958年建設。レバークーゼン本拠地。スタジアム内にホテル、レストランなど。2006年FIFAワールドカップの会場候補に名乗りを上げたが、規定の4万人に満たないため断念。その後、2008-2009シーズンに改装工事が行われ、7000万ユーロを投じて収容人員は約22,500人から3万に引き上げられたという、チグハグな過去を持つ。2011年FIFA女子ワールドカップを開催。UEFAチャンピオンズリーグ2019-20平均入場者は2万6592人で32クラブ中29位。アヤックスは5万1962人で9位。
イギリス
トッテナム・ホットスーパースタジアム(ロンドン)
イギリスのスタジアムの中では高い評価。トッテナム・ホットスパーFCの新本拠地。2019年4月供用開始。ロンドン貧困地区に巨費を投じて新スタジアムで街を蘇らせる…総工費約1430億円。出資元はバンク・オブ・アメリカ・メルルルンチ、ゴールドマンサックス、HBSC。収容人員は約6万2000人。故にアクセスはノーグッド。アメフットでも使用されることで稼働率アップ、収入アップを目指す。また様々な仕掛けで来場者の滞在時間を長くさせ消費を促す。
スタンフォード・ブリッジ(ロンドン)
世界のサッカークラブランキングでトップ10に名を連ねるチェルシーFC本拠地。1877年開場。収容人員は約4万2000人。スタジアム周辺はチェルシービレッジとしてホテル、SC、レストラン。地下式の巨大グッズショップもある。複合スポーツ施設で試合のない日も稼働する。所有権を有するチェルシー・ピッチ・オーナーズは1970年代、財政難に直面したクラブを救済するため立ちあがったサポーターたちによって結成された非営利団体。アクセスは、地下鉄駅そば。平均入場者数は常に約4万1000人。
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