画像は休校が続く中、広島市内の公園で”調整”する球児たち
令和2年夏季広島県高校野球大会(広島県高校野球連盟主催)第10日は、8月9日、呉市の鶴岡一人記念球場で決勝を行い、広島商が9-1のスコアで広陵を押し切り優勝した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で一度は広島の夏と高校野球は無縁のものとなりかけた。しかし、広島県高校野球連盟は6月5日、独自の大会開催にGOサインを出した。「感染防止や日程の問題など課題はあれど広島のチャンピオンチームを決めたい」と…
関係者と球児の願いは通じ予定通り、この日、同球場でふたつの決勝戦があった。軟式は崇徳が広島なぎさに逆転勝ちした。
広島なぎさ 000 050 000 5
崇 徳 020 002 03× 7
硬式は広島野球の歴史を互いに100年以上紡いできた伝統校同士の対戦になった。試合後、勝った広島商の荒谷監督が、長崎原爆投下の半旗を背に発した第一声にはそのすべてが凝縮されていた。
「代替大会をほんとにいろんな方のご支援をいただいて開催していただいたことにまず感謝いたしますし、他競技ではなかなか開催できないというスポーツもあります。悲しんでいる生徒も目の前にいる中で、こうやって最後まで残らせていただいて、広陵高校さんという素晴らしい相手に勝利できたことはほんとに感謝のひと言に尽きると思います」
「この大会に臨むにあたりいろいろな高校さんがいろいろな思いで指導者の方も指導しながら戦ってこられたと思いますし、広商も”Hope is good”という合言葉で休校中も彼らが自主的にやってくれたっていう、やはりそういう休校期間中の過ごし方が彼らの強みというか、きょうの勝利に結びついたのではないかと思っています」
「優勝できましたけども、やはり人生…高校野球は教育の一貫だと思っていますので、いかなる場合も希望を持ってこの先卒業したあとも、しっかり感謝を感じながらがんばってもらいたいと思っています」
広島商 050 200 020 9
広 陵 000 001 000 1
スコアだけ見れば”予想外の大差”だが、安打数は広島商12、広陵10。勝敗を分けたのはいずれも微妙なシーンで、それはいかなる強豪校であっても一度浮足立つと歯車が狂ってしまうことの裏返し…
初回、簡単に3人で抑えられた広島商は二回、一死から五番天野の詰まった打球がセカンドの後ろに落ちた。
続く竹中の当たりもフラフラとライト線に落ちてニ、三塁になった。
打席には主将の中島。前日の武田戦でも二回に2点を先制してなお無死一塁という場面で出番となり、ボールカウント3-1からバントヒットを決めていた。
そのデータは当然、広陵バッテリーも知っている。
だから中島は初球から動いた。いきなりのバントはちょうど三塁手とマウンドを駆け下りる工藤の間に転がった。スクイズでの1点。決めた方と決めれた方では雲泥の差だろう。ましてや伝統校同士の一戦である。
続く投手・廣島のバントも内野安打となりこれで4連打。九番小玉は高めを高い逆方向の左前に2点適時打、さらに一番に戻って寺本が右前適時打、すかさず二盗、二番で2年生の中下も犠飛…
その裏、5点を追いかける広陵はヒットと送りバントで一死二塁。しかし八番に”抜擢”さえた矢違はスイングが大きく空振り三振。九番工藤の小飛球が内野安打となり二死一、三塁と再びチャンスを迎えたが百戦錬磨の一番岩本は自分のスイングができずに一ゴロに終わった。
広島商は武田戦で160球以上投げたエース左腕の高井はもう使えない。ただ、もうひとり、先発完投型の左腕の廣島を決勝のマウンドに送れる状況にあったのはさすが、というしかない。一方の広陵は準決勝、高陽東戦に18-2で大勝。先発した工藤を三回で下げ、決勝に備えた。
しかし工藤は2点を加点された四回途中で降板。一方、今大会初先発の廣島は八回まで投げ続けて1失点だった。
広陵はけん制タッチアウトが2回のほか、フライアウトでの飛び出しによるダブルプレー、さらには連打で勢いずきかけた場面での守備妨害もあった。
圧倒的な強さで決勝まで勝ち上がってきたその実力は誰もが認めるところ。その強みを早々に封じ込めた広島商の二回の”先制パンチ”はやはり強烈だったことになる。
ところで、この決勝戦の模様は今大会でただ一度のNHK地上波中継があった。きっと県下の球児たちは固唾をのんでその行方を見守ったことだろう。その中にはベスト4、ベスト8に残った強豪校の1、2年生もいる。2年連続で広島王者の座についた広島商に来夏、挑戦状をたたきつけるのはどこになるだろうか?(ひろスポ!・田辺一球)
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