旧広島市民球場跡地での新サッカースタジアムプランのひとつ
サンフレッチェ広島の新サッカースタジアム問題が年明け、さまざまな動きを見せている。
まず、キャッチボールの球を投げ返す立場の広島商工会議所、広島県、そして本来3者のリーダー役であるはずの広島市。
新サッカースタジアム問題で今年度中に一定の結論、方向性を出すべく水面下で年明けも調整中だ。しかし、すでにひろスポ!で報じたように建設候補地2ヵ所のうちの「本線」とされたはずの広島みなと公園への建設プランにGOサインが出る可能性は限りなくゼロに近い状況。「国内を代表する港湾、物流拠点」の宇品地区に「物流を阻害する」大規模集客施設の新設が認められることはまずない。※「 」内は関係者の言葉
グローバルな視点から見ても神戸、横浜、東京、大阪など国内を代表する港湾の存在感は低下の一途となっている。1980年にはコンテナ取扱個数で世界4位だった神戸は震災の影響も大きく2014年には50位圏外へ急降下。同年では東京の28位が最高で、トップ10圏内は遥か遠いものとなり、急成長するシンガポール、高雄、釜山、それに上海、香港、広州、天津、新センなどの中国勢に大きく水を空けられる非常事態となっている。
普段、広島市民が目にしにくい瀬戸内海からの広島の風景。手前が港湾物流地区。この景色を見れば海運、港湾から都心部への成り立ちがわかる。戦前、軍都廣島の時代より海とともに成長してきた広島は、ベイエリアの再生も含め早くから「海生都市圏構想」を進めようとしてきており、そのグランドデザインの中に新サッカースタジアム構想が何十年も前からあったのなら話は別だ。だが、肝心の港湾関係者への事前説明もなしに、単に「サッカースタジアム検討協議会で話に出た」(行政関係者)から、と広島みなと公園をスタジアム建設候補地としたことにハナから無理がった、ということになる。
我々は広島の視点で、あるいは広島のスポーツ振興の視点で”のみ”現状と未来を語りがちな傾向にあるが、それも日本の安全保障、日本の経済的、文化的な繁栄があってこそ。その地域の、ひいては国内の経済成長に大きく関与する「物流を阻害」する方策を、広島県、広島市が採用するならば「物流」を保証するための100億円単位の巨額なインフラ建設か、サッカースタジアム建設回避かの2者択一しかなくなる。そして自ずと結論は後者となる。
あとは港湾を監理する広島県がどのタイミングでギブアップ、の声を上げるか?要はそれだけのことだ。
サンフレッチェ広島サイドでは年明け以降、選手は休息中でも様々な動きがあった。新体制が発表され、新メンバー30選手の顔ぶれも揃った。新ユニホーム、新ユニホームスポンサーも発表された。
そんな中、森保監督自らが地元テレビ局の夕方ワイドニュース番組に相次いで中出演。今シーズンに向けた戦いについての意気込みなどを語るとともに新サッカースタジアムの必要性についても熱く語った。
11日にオンエアされた広島ホームテレビ「Jステーション」では2つの建設候補地のメリット、デメリットが紹介されたが、旧広島市民球場跡地については相変わらず「原爆ドームそばで高さ制限があり掘り下げるために余分に「54億円必要」と報じられた。
それを言うなら広島みなと公園は「インフラ整備に200億から300億かかる」と付け加える必要がある。無論その費用は広島市と県で折半だ!?
また「54億円」は旧広島市民球場跡地に「造りたくない」言い訳のひとつに過ぎない。このことは広島市議会議員の石橋竜史氏を始めサッカー関係者の間では一致した思いとなっている。
石橋議員公式Webサイト
blog.koeya.com/20141016.shtml
森保監督は「Jスポーツ」の中で次のような話をした。
「広島市内中心部にサッカースタジアムを造っていただいてそこで広島のみなさんが集う場所になればいいなと思います。サッカーに携わる者として話をさせていただいていますが、サッカーだけじゃなくて、広島の街にとって”これが広島だ”という集まれる場所があれば街に潤いがもたらされる。そんなスタジアムを造っていただければいいなと思っています」
広島ホームテレビ「Jステーション」より
12日にオンエアされた広島テレビ「テレビ派」はこれまでの流れからすると”異色”だった。自社制作番組「進め!スポーツ元気丸」でも長年に渡りまったく新サッカースタジアム問題を深掘りしてこなかった局であるにもかかわらず、今回は新サッカースタジアム問題にも切り込んだ。
日本テレビが地上波中継を独占した昨年12月のクラブワールドカップ。世界3位の座に上り詰めたサンフレッチェ広島の4戦合計の広島地区での視聴率は何と3桁、100パーセントを超えた。系列の広島テレビにとっては最高のクリスマスプレゼントになった。
1試合平均で25%以上。視聴率低下が言われて久しいこの業界にあってサンフレッチェ広島はまさに「地域の宝」であるとことが証明された。
局は違うが、昨年12月のチャンピオンシップ第2戦、試合後半の視聴率は広島地区では35・1パーセントにもなった。(いずれもビデオリサーチ調べ)。驚異的な数字は広島人のサンフレッチェ広島への思いに「普遍性」が加わったことの裏返しでもある。
「テレビ派」はサンフレッチェ広島の久保允誉会長の声も単独取材で収録していた。
久保允誉会長はまさに旧広島市民球場跡地の目の前の地元で幼少期からを過ごしてきた。広島人として「紙屋町地区の広島における相対的立場の低下、国内ライバル都市との格差拡大」には我がことのように胸を痛めていると聞いている。
久保允誉会長は「テレビ派」のVTRの中で「3月には新サッカースタジアムの私案を出す」とコメントしていた。その思いはすでに昨年12月7日にあった「サンフレッチェ広島激励の夕べ」と12月23日に旧広島市民球場跡地で開催された「優勝報告会」でもサポーター、関係者らに向け明らかにしている。「激励の夕べ」では松井市長、湯崎知事も直接、その声を耳にしている。
それでもなお、市や県の立場は「造るかどうかの是非も含めて検討中」なのだという「サンフレッチェ広島は2位でいい」あるいは「3度優勝すれば…」の松井市長の発言も含めて、昨今の市民、サポーターの思いが「造るかどうか」ではなく「いつまでに造るか」に移っていることは明らかだ。
広島市や広島県が、サンフレッチェ広島以外で住民が「視聴率35パーセント超え」の別のソフト提供を確約するなら話は別!?だが…。
そして、旧広島市民球場跡地への建設を目指す新サッカースタジアムが広島にどんなプラスの影響をもたらすか、それを森保監督も久保允誉会長も説き、ひろスポ!でも年明けから紹介し続けている。
最後に、久保允誉会長の「優勝報告会」でのサポーターへ向けての声を紹介する。
サポーターに自ら呼びかけた、ということになれば久保会長自らも率先して行動に移す、ということなのだろう。新サッカースタジアムに関する「私案」では、今もってまったく見当すらされていない財源についても言及される可能性が高い。スタジアム建設費はおそらく100億円前後。その3分の1、4分の1を久保が仮に出す、と言えば広島市、広島県もこれまでのような「逃げの一手」ではいられなくなる。
新サッカースタジアム取材班
優勝報告会であいさつする久保允誉会長、その横に「雨の中、この市民球場跡地、いや、新スタジアム建設予定地にお越しいただき誠にありがとうございます!」と声をあげた千葉主将。
久保允誉会長の話
みなさん、どうもありがとうございました。ほんとにみなさんの笑顔ありがとう!悔し涙ありがとう!歓喜の涙ありがとう!
ほんとにみなさんのそういう強い思いで優勝できたと思います。私も今まで18年、サンフレッチェの経営をやってきましたけどこんなに嬉しい1年はありませんでした。
私はこのチームはもっとできると思う。また、大きな目標がまたひとつ見つかったというふうに思っています。
また夢を見たい、もっと大きな夢を見たい。と私は思っています。先ほど、千葉ちゃんから…「新スタジアム、専用スタジアム候補地!と、いうふうにありました。私はみなさんとともに専用スタジアムのピッチを、芝をみんなと一緒に張りたいと思っています。
(会場から大きな拍手)
そしてみんなの名前をスタジアムに刻みたいと思っています。
私が旗を振りますので、みなさんも専用スタジアムのサポート、よろしくお願い致します。
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※2012年11月に新サッカースタジアム取材班が発刊したCARP2012-2013永久保存版の記事の中から、当時の市民が旧広島市民球場跡地へのサッカースタジアム建設を望む理由を紹介。
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※同じく市民らの声を紹介するとともに、ソウルワールドカップ競技場、球場跡地に都心部活性化の拠点として新設された東大門のDDPの事例をチェック。
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