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2015年01月17日
編集部

サンフレッチェ広島社長、小谷野薫氏が広島市市長選立候補へ、広島のサッカースタジアム建設と街作り推進目指す

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広島国際会議場でシンポジウムを開催し、自らサッカースタジアムの必要性を説くサンフレッチェ広島の小谷野社長(左端)。クラブの経営状態なども細かく提示して市民、サポーターとともにスタジアム建設推進を目指してきたが行政側の高い壁の前に時間だけが過ぎていき、今回の市長選出馬に至った、と思われる。

 

 

4月12日投票の広島市長選にサンフレッチェ広島社長の小谷野薫氏(51)が立候補することを1月17日付中国新聞が一面で伝えた。現職の松井一実市長(62)も立候補すると報じられており、他に立候補予定者はいるものの、「サッカースタジアム」建設問題を巡り市長選は”一騎打ち”の様相を呈してきた。

ひろスポ!ではこれまで松井市長の動向についてもかなり詳しく伝えてきたが、すべては”この時”に備え、両者のスタンスを報じることを目的としていた。

 

松井市長はまだ自身の今後について明言を避けているが、そんな中、小谷野氏が先手を打った格好。サンフレッチェ広島としては今シーズンに向けた監督以下、現場レベルの組織の新体制を15日に発表したばかりだが当然、社内の組織の体制固めも必要で、小谷野氏の立候補表明に向け水面下で準備を進めていた。

小谷野氏の市長選出馬のうわさはすでに昨年の早い時期からあった。さらに昨年8月、広島市民ら74人の命を奪った大規模豪雨災害のあと、週刊誌が松井市長の対応の拙さについての記事を特集した際にも、小谷野氏に市長選出馬の可能性を問い合わせている。

1月13日に広島市役所であったサッカースタジアム建設に向けてのトップ4者会談(松井市長、広島県湯崎知事、広島商工会議所深山会頭、広島県サッカー協会小城会長)の席で小城会長が話し合いからの”脱退”を宣言したのも今回の流れをくんだものと言える。

小城会長は小谷野氏とともに昨年末まで1年半を費やして続いた「サッカースタジアム検討協議会」の委員として「広島の都市機能充実と平和の推進に市民レベルでも大きく寄与する都市型複合多目的スタジアムの旧広島市民球場跡地への早期建設」を求め、具体策を述べ続けてきた。

ところが同協議会は「旧広島市民球場跡地への建設に賛同しない」立場の委員との間で完全に話し合いは平行線に…。しかも同協議会のまとめ役である三浦会長の思いも別のところにあるため、結果的に同協議会では、建設場所の絞り込み、事業主体、資金調達方法、事業スキーム、管理運営方法、という基本的な事項が何ひとつ決まらなかった。三浦会長は松井市長と一緒に広島市関係のシンポジウムに出席するなど、ほかにも広島市から多くの仕事を受けている。

この”何ひとつ決まらない”「提言書」が昨年末、三浦会長から松井市長ら4者会談のメンバーに手渡された。よって13日の4者会談では当然のごとく、場所の絞り込みや事業主体の選定に向け再び「事務レベルの作業部会」を設置して来年度いっぱいでスタジアム建設の可否も含めて計画作りを行うことを申し合わせた。

こうした一連の流れはサッカースタジアムの早期完成を願うサポーター(ここでいうサポーターは全国のサポーターを指す)、市民県民の熱い思いとは大きくかい離している。「サッカースタジアム検討協議会」が誕生した最大の理由は40万件近い署名が「スタジアム早期完成」を求めているから。しかし同協議会では「署名は関係ない」との趣旨の発言が複数の委員の口から何度も繰り返された。

主な会議だけでも16回を数えた同検討協議会の最後、三浦会長が各委員に「場所の絞り込み」のための意見を求めた。中には「私は詳しくないので…」と返す委員もいた。ハナから広島市側の委員選定には問題があった。そんな中、小谷野氏は次のように述べた。

 

建設するとなれば当然、公的資金も投入されるが、これまでにエディオンは約七十億円をスポンサー料として支払い、マツダもほぼ同額。サンフレッチェの経営を支えるため、スタジアム建設費に匹敵する約百四十億円を両社で拠出している。

広島のサッカーの芽を絶やさないために、ご配慮をお願いしたい。

サンフレッチェの経営と広島の街づくり、このウィンウィンを達成するためには、やはり旧市民球場跡地で、既存の商業施設との集積効果を図っていくのが、投資効率が一番いいと考える。

みなと公園は高評価になっているが、実際には代替地確保には六十億~百二十億かかるとみられ、大きな問題だ。また、アクセスはなんとか切り盛りできるというギリギリだが、集客、リピーター養成など、サッカークラブとしての経営面で我々は非常に危惧している。

この協議会は率直に言って、場所がどこかということよりも、これから議論を深めようという段階で終わっている。本来四回目か五回目の会合でやっているべき内容。それが感想だ。

三か所の候補地の中でどこがいい、悪いというのは、判断力のある一人の大人として恥ずかしいことではないかと思う。いくつか課題は明らかになったが、街づくりの創造的な議論は出来ていない。また市民の意見、ユーザーの意見を聞くことやそれに関する議論が無かった。

本来、設計士を加える必要もあったと思うが、中途半端な議論が多かった割には重要な議論が抜けていた。四十万人の署名があった中でも圧倒的に重視されていたアクセスについて、真剣に考えられていない。

従って私は、サッカークラブの経営から考えれば市民球場跡地しかないと思う一方で、今回の協議会の結論に関しては、三候補地のメリット、デメリットについての併記に終わらせるべきで、安易なまとめはつくるべきではない、それが私の結論だ。

 

また、国内外の事例研究に長けスポーツマネージメントの専門家の立場で同検討協議会に参加した永田靖委員(広島経済大学教授)も次のように述べた。

何も諮問されていない協議会で,「最終答申を待つ」といわれても困惑しています。そもそもスタジアムの必要性を認識し、最小限のコストで最大限の経済波及効果を生み出す施設を検討すべきものを考える場が「検討協議会」であると思っていました。

しかし,実状は広島でのサッカーの必要性やサンフレッチェ広島の広島での意義など,スタジアム建設とは無縁の情報共有から始まり,ただ回を重ねるだけの意見交換会であったことが残念でした。

スポーツビジネスに関してファイナンス面から検証している私にとって、スタジアムはスポーツビジネスにおいて必要不可欠なものです。幸いにもスタジアムは建設することが望ましい,ということで協議会委員全員で一致したことが救いです。

ただ,建設候補地を選定するに当たり,正確な設計をしないで算出したスタジアム建設費,数値の根拠がない掘削時の地下水対策費、必要性を疑うメッセコンベンションの収益は算定されているが、建設コストは示されていないという、あまりにもアンバランスな数値を持って検討するには限界を超えた虚しさを感じました。

サッカースタジアムの建設は,広島においてサンフレッチェが必要か否かを問われていることにもなります。広島の宝を次世代に受け継ぐためにも、自治体が主導し、当事者意識を持った諮問委員会の早期設置を希望しています。

 

このようにサッカースタジアムの早期建設に向け真摯に取り組もうとしている関係者にとって同協議会はまったく意義のないものになり下がっていた。小谷野氏がこうした流れの中に自ら身を置き「広島市の首長」のイスに座らない限り、スタジアムも広島の街作りも進まない、と考えるのは自然だろう。

 

小谷野氏の今回の市長選出馬を決定的にする”場”が昨年12月8日にあった。

広島サッカースタジアム構想空転でサンフレッチェ広島、久保会長が広島政財界に協力要請、広島市の松井市長は祝辞でスタジアムの話題「割愛」

サンフレッチェ広島が株主・スポンサー各社などに向けて開催した「感謝の夕べ」の席上、サンフレッチェ広島の久保允誉会長はチーム状況などについて触れたあと、檀上から400社以上の関係者に向けこう呼びかけた。

18チームあるJ1の中で専用スタジアムがないのは4チームだけ(川崎フロンターレ、ヴァンフォーレ甲府、専用スタジアムを急ピッチで建設中のガンバ大阪、徳島ヴォルティス)。今度J1に上がる長野(松本山雅FC)でも専用スタジアムがあります。

アウェーの17チームがやってくることで街ににぎわいも生まれるという話を聞いています。広島の地域の活性化に繋がるスタジアム。カープもスタジアムができて駅周辺が変わってきています。我々もサッカーを通じて地域の活性化を図り、広島はええとこ、とまた来てもらえるように、今日ご出席の各氏にスタジアム建設を後押ししていただきたいと思います。

そのあと祝辞を述べた松井市長はその中でスタジアム問題については「割愛します」として会場をどよめかせた。”両者の立場”はこの時、いっそう明確になった。

 

サンフレッチェ広島が「社長」を市長選の”ピッチ”に投入するまでの判断に至ったのは、それだけ多くの障壁がサッカースタジアム建設の前に立ちはだかっているからにほかならない。

端的に言えば「サンフレッチェ広島に旧広島市民球場で毎週末に”試合”をやってもらいたくない企業が存在する」(関係者)ということになる。と同時に広島市も秋葉前市長時代に「旧広島市民球場跡地も含むあの一体に線引きした既存の計画通り」(関係者)にあの一体を整備していこう、という思いに変化はない。

こうした一部企業と行政、そこに関連する「跡地へのスタジアム建設反対派」とサンフレッチェ広島、そして広島市民・サポーターとそれを支援する「跡地へのスタジアム建設推進派」が水面下でぶつかり合う、天下分け目の決戦には「小谷野市長」の誕生しかない、ということなのだろう。サンフレッチェ広島のHPによると現在、署名数は40万6830件となっている。

www.sanfrecce.co.jp/special/signature/

 

ちなみに、松井市長の前回投票獲得数は16万5481票。

松井市長は昨年12月の市議会で安佐市民病院の移転問題に関して「賛成してくれればすぐに目に見える形で恩返しします、と(自宅に来て)話した」と藤田市議に暴露された。

また昨年8月の大規模土砂災害の際、そのまま自宅で「寝たり休んだりしながら電話で指示した」と発言して同じく市議会で「東日本大震災で壊滅的な被害の出た自治体以上に対応が遅い」と痛烈に批判された。

さらに一昨年12月には公式の場でJ1での2連覇へ向けギリギリの戦いを演じているチーム関係者を目の前に「サンフレッチェ広島は(優勝するとスタジアム建設を急がないといけないので)2位でいい」と発言して市民らから猛反発を受けている。

さらに、こうした批判にさらされた原因をそれを広めたメディア側に求め、あらゆる手段を使い「口封じ」(関係者)に走るなど、およそ首長らしかなぬ行動が大きな反発を生んでいる。

こうした状況下で松井市長が”続投”を表明すれば自民・公明両党の推薦を求めることになる、という。そうなれば市長選のカギを握るのは「普段は市政に興味がない」あるは「選挙には行ったこともない」若い世代の浮動票。サンフレッチェ広島の年間入場者数はここ3シーズンでおよそ25万人から30万人。

”動員力”では負けていないが果たして…

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